男はオオカミなのか
多くの女性は幼少期から性的視線にさらされ、「男はオオカミなのよ」という概念を植え付けられてきたのではないだろうか。この「男=オオカミ=女を犯したがっている」という固定観念は、男根主義的イデオロギーを内面化して疑わない男女にとっては何ら疑問に思うところのない、至極当たり前のことだ。しかし一方で「草食男子」「若者の××離れ」という新語が広まったように、特に若い世代では必ずしも性欲を(ところかまわず)発散する男性が「当たり前」ではない。そもそも人間の男は人間の男であり、オオカミではない。オオカミを「獰猛で野蛮で、メスと見れば無理やりにでもチンポを挿入したがる種」と捉えた比喩も、まずオオカミに失礼だ。
ともあれ、この世の中で語られる男性の性欲は、実態よりも肥大化してはいないだろうか。
AVやエロ本は「男がヤリたい」目線で作られ、様々な週刊誌のセックス特集では50~70代の男性を対象として「20代の女と死ぬまでセックス!」「女性器サイコー!」「不倫してこーぜー!」みたいな企画が毎号組まれる。果たして、男性はそんなに「いつでもイイ女とセックスしたい生きもの」なのか? もっと言えば、「チンポが勃たないのは男として無能」という価値観にもこの社会は苛まれている。
セックスを楽しむこと自体は悪ではない。しかし過剰にセクシャルな記号を氾濫させた社会で、「男はオオカミなのよ」という前提の元に生きていくことに抵抗感を持つ人も少なくないだろう。それはもちろん、男女の区別なくだ。
そこで、「あなたは(そしてあなたの知っている男性は)オオカミですか?」という問いを込めて、様々な一般男女にインタビューすることで、messyでは「男の性」というものへアプローチを試みる。
第一回は、大学時代から交際していた女性と結婚したという会社員男性・須藤さん(37)に登場していただく。