私の知らぬ間に、子宮は毒を吸いあげる臓器になっていたようです。
「性器の粘膜は、体のどこよりも吸いあげる力が強いんです」
「子宮に化学物質がたまるので、それを洗い流そうと経血の量が増えるんですよ」
笑顔でそう話してくれたのは、推定20代くらいのオシャレな女子店員さん。そしてここは都内のオシャレスポットD山にある、「布ナプキン専門店」。自然光が差し込むナチュラルな雰囲気の店内で女子気分を満喫していたところ、一瞬にしてツンドラの大地へ降り立った気分へと早変わりしました。もしかして、ヤバい店に足を踏み入れてしまったのだろうかと……。
「布ナプキン」とは、10数年前から、エコロジー指向の強い人たちのあいだで注目されはじめたという〈布製生理用品〉のこと。ポピュラーな使い捨てタイプの紙製と違うのは、洗ってくり返し使える点です(紙おむつVS布おむつのようなものです)。私も今まで、チラホラと気にはなっていました。ビールをあおりながらゾンビがはびこる荒廃した世界をさまようという超絶恐ろしい連ドラ『ウォーキングデッド』を観ながら、「サバイバル生活には、やっぱり布ナプでしょ!」なんて考える程度には。
繰り返し使えるので、地球にやさしい。肌が弱いので布のほうがかぶれにくいという人もいるでしょう。さらに前出のとおり、物資が限られた環境でも役立つハズ。毎回手洗いで血を落とす手間があるとしても、それ以上のメリットがあるかもしれません。
……ですが!!
布ナプ派の掲げる“紙ナプヘイトスピーチ”が、凄い。ええ、凄いんです。
紙ナプキンは全否定!
同店の壁には、デカデカとこんなことが書いてありました。
“発がん性があるとされ、子宮内膜症や不妊症、PMSなどの女性疾患を引き起こす原因になりうる高分子ポリマー入りの紙ナプキンはできるだけ使用せずに、ここにあるような布をあててみてください”
このお説のキーワードには「経皮吸収(けいひきゅうしゅう=皮膚から物質を体内に吸収すること)」があります。布ナプ推進派の一部は、紙ナプキンを使うことで性器から化学物質が吸収され、子宮に蓄積され病気になる! と語っているのです。でも、「高」分子は粘膜とはいえ、皮膚を通過できないのですが……。もしや小説『壁抜け男』のごとく、ある日突然、物理的法則を無視した能力が備わり、特殊高分子ポリマーが我々の知らぬところで誕生していたのでしょうか。それならとても怖いですね。
そういえば、冒頭のかわいい店員さんはこんなことも教えてくれました。
「紙ナプキンには冷えピタと同じ、体を冷やす高分子ポリマーが入っているんですよ」
お嬢さん、冷えピタは高分子ポリマーが吸熱するのではありませんよ。水分の気化を効率よく行うために高分子ポリマーが入っているのですよ……。タプタプに血=水分を吸い込んだ紙ナプキンを股に当てつづけていれば、たしかに冷えることもあるでしょう。でもそれ、濡れた布を股に当てていても、水分量の差はあれ同じでは? あ、そのごくわずかな差が問題なのでしょうか。女性の体は、さすがデリケート。
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