〈ソウルの下北沢〉と呼ばれるホンデ(弘大)は日本人留学生の姿を多く見かける街でもある。平日の昼下がりにカフェで仕事をしていると、近くの席に日本人女子グループが座った。きっと全員20代。派手でもなく、地味でもなく、ピンクのチークがちょっと目立つぽわ~んとした雰囲気の3人組だ。どうやら1人はこちらに留学中で、彼女を訪ねて友人2人が日本から遊びにきたらしい。
「韓国の男ってちょーしつこいの」
さっそく出たぁー! 在韓日本人による、「韓国の男ってこうなのよ」話。留学生が多く出没するシンチョン(新村)、ホンデ、アックジョン(狎鴎亭)あたりのカフェでは頻繁に見かける光景なのだが、韓国人男子と交際経験のある日本人女子が、韓国人男子未経験の友人にあれこれレクチャーしたり、自慢したり、ボロクソいったりして(ま、話の大半は自慢だが)、これが隣で聞いててなかなか面白いのだ。
「毎日LINEで50通ぐらいメッセージ送ってきて、まじ面倒くさい」
「えーっ、すごーい! めちゃくちゃ愛されてるじゃん!!」
「ウチらまだつき合ってるわけじゃないのに、向こうが勝手にひとりで盛り上がっててウザい」
「どんな人? 写真ないの? 顔みたーい!」
「練習生やってる子。年下だけどね」
「うそーッ、練習生とつき合ってんの? すごーい!!!!!」
出た出た出たぁー!「わたし、練習生とつき合ってるの」告白。これ、ほんとよく聞くのよね。
説明しておくと、〈練習生〉とは、アイドルや演技者デビューを目指し芸能事務所でトレーニングに励むスター予備軍のこと。事務所によっては携帯没収、恋愛NG、休む暇なく朝から晩までレッスン漬け……の毎日。こんな生活を何年間も続け(なかには10年なんて人も!)、ようやくデビューとなるのだが、練習生すべてが確実にデビューできるわけではない厳しい世界だ。
どうやら一部の日本人の間ではこの練習生ってのが人気らしい。「クラブで練習生に声かけられた♡」「カフェで偶然一緒になった練習生とつき合うことになった♡」と話す女子に何度か会ったが、その半分ぐらいは後日、「ほんとは練習生じゃなかった」「練習生じゃなくて、練習生を目指してるだけだった」となることも少なくない。
さてさてこちらのカフェにいる女子がいう〈練習生〉とは、どんな人なのだろうか?
「彼の写真? セルカ(=自撮り)だったらあるよ」
「見た~~~~い」
「たぶん呼べばすぐに来ると思うけど~」
毎日大量のLINEを送りつけ、呼べばすぐに飛んでくる……。練習生にしてはなかなか自由度の高い彼だが、ぜひぜひお顔を拝見したいっす!
彼氏クン、やってきました。
で、45分後、ウワサの練習生がカフェに登場。よくいるフツーの大学生みたいな男の子が来たけど、え~と、この子で間違いないよね? 練習生って別にまだアイドルじゃないから、これぐらいのビジュアルでもいいっちゃーいいんだけどさ……。なんだかな、あれれ? な雰囲気。それは日本から来た彼女の友人二人も同じだったようで、さっきまでの「見た~~~~い」と大興奮してたテンションはどこへやら、「へぇ~」と微妙は反応だ。
留学生の彼女はそんな反応もお構いなし、さっそく彼に向って「チャギヤ~~、モォモッコシッポ?」と甘え口調。ちなみに「チャギヤ」とは、愛する恋人同士がお互いを呼ぶときに使い、〈ダーリン〉〈ハニー〉のような言葉。彼女のセリフを日本語にすると、「ねぇダーリン、何が食べたい?」となる。さっきの話ではしつこい彼をずいぶん嫌がっていたようだったが、なんだよ、けっこう彼のこと好きなんじゃん! ラブラブじゃん!!
ふたりはそのままイチャイチャしながらカフェの注文カウンターへ。すると待ってましたとばかりに残された日本人女子のコソコソ話がスタート。小声で話しているのでところどころ聞こえなかったが、ざっとこんな内容。
「ほんとに練習生?」
「無理じゃない?」
「見て見て~、○○ちゃんがお金出してる!」
女って怖いよねー(笑)。
■韓 美姫/先日スーパーで買い物中のペ・ヨンジュンに遭遇。顔がまん丸、体も少しぽっちゃりしてたから二度見しちゃいましたけどww