先週、YouTubeにて公開されたルミネのCMが大炎上した。女性ターゲット層の購買を促すために、男性上司による女性社員への「外見差別」(セクハラ、パワハラ、モラハラに該当)を利用した演出に批判が殺到。以降、動画公開を取り下げたルミネによる雑な「三行謝罪」も延焼に一役買い、フェミニズム寄りの批判、広告の在り方を問題視する声、「批判の批判」等、様々な角度の意見が噴出し続けた。
一連の騒動に対する私の感想は、一言「なんでこんなもの世に出しちゃったの?」だ。大変不躾な「こんなもの」呼ばわりの内訳は、不快な内容が1割。残り9割は、広告としての目的・意義・コンセプトがまったく不明瞭な点に依拠する。
不用心にもほどがある
厚生労働省がパワーハラスメントの典型例を示す『職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告』を公開したのが2012年1月。ハラスメント被害が続々と立件され、各企業が改めて意識を問われる最中、【被害への順応】をもって【購買を促す】企業広告など、今日日、ネガティブキャンペーン以外の何ものでもないことは明らかだ。
ましてや、女性による自立したファッションの楽しみ方を推奨する名広告を多数、生み出して来たルミネが、なぜ、今、ハラスメントを露骨に扱うCMを制作・公開したのか。
【女性の「変わりたい」気持ちを応援する姿勢】と【リニューアル】を、とてつもなく迂闊にリンクさせた結果、「ズレ」が世に提供されてしまったのだろうが、広告クリエイティブに定評のあるルミネとは思えない迂闊さだ。無論、ネガティブキャンペーンや炎上マーケティングを狙う作為があるとも思えない。