【第一章:お小遣いゼロ円生活で搾取され続けた「あゆこ」の場合】
【第二章:働き始めたら「もうお前とはやっていけない」と言われた「みずき」の場合】
【第三章:「お前と子供のいる家は疲れる」と去られた「かえで」の場合】
【第四章:耐えても報われないと知った女たち】
結婚と離婚を経験した3人の女性たち。経験したからこそ言える、「私たちに何が起こったのか」
・あゆこ(28)22歳で大学卒業と同時に、8歳年上の男性と結婚。夫が初めての彼氏だった。現在、別居して離婚裁判を申し立て中。
・みずき(33)26歳の時、出会って3カ月の男性から付き合ってもいないのにプロポーズを受け「面白い」と快諾して結婚。33歳の冬、夫から「もう限界」と離婚を切り出され「私もだよ」と承諾。
・かえで(30)27歳で同級生の男性と結婚、一男を授かるが、夫から離婚を求められ、29歳で離婚。
――みなさん離婚に後悔はないですか?
みずき ないです。むしろ、息を吹き返した感がすごいあります。
あゆこ ほんとそうですよね。彼といた時、私は、ほとんど殺されてた。彼がいなくなったら世界は滅びるんじゃないかって思ってたけど、逆でした。
かえで ああ、私も彼がいなくなったら世界は滅びるんじゃないかって思ってたけど、平気でしたね。シングルマザーになるなんて死んじゃう、って思ってたんですけど。今はすっごく快適です。
みずき 快適! 陰毛が部屋やトイレに落ちていないし。
あゆこ 部屋も汚れないし。彼はほとんど抜いだら脱ぎっぱなし、やったらやりっぱなし。自分で散らかすくせに、部屋が汚いと怒る人だったんですね。別居してから、一人だと家ってこんなに散らからないんだ! って嬉しくなりました。
かえで モノをそのつど、所定の位置に戻すようにすれば部屋ってそこまで散らからないですよね。
あゆこ そうそうそう。それに感動して、朝起きても散らかってない! みたいな。掃除の手間がほんと50分の1くらいになって。ほぼクイックルワイパーで拭くだけで良いし、トイレも全然汚れません。まさに快適です。
みずき 離婚したことでこんなに心が軽くなるなんて知りませんでした。つらい結婚生活に耐えている人、離婚した方がきっといいですよ。「離婚しない方がいい」って思わせてる世間って何なんだろ。
かえで そう、離婚は絶望だって思わされてたけど、やってみたら大丈夫でしたもん。
あゆこ 私も早く離婚成立させたいです。
――でも離婚して幸せになるには、ちゃんと経済的な余裕もある程度必要だし、弁護士とか行政へのアクセスも必要だし、見切り発車で着の身着のまま追い出されたらたちまち貧困に陥る危険があります。その点、あゆこさんは「うちの旦那はモラハラだ!」と気づいた瞬間からいろんな情報にアクセスして、スピーディに動いているのがすごいです。
あゆこ まさか自分が女性センターとか、東京都の相談機関に電話するなんて思いませんでしたけどね。でもそういうのって、都民なんだから使っても良いんですよね、友達や親との付き合いも遮断されて「彼と私だけの世界」に閉じ込められている人は、相談機関や女性団体など、「外の世界」に是非アクセスしてみてほしい。彼は「ああいう団体は、頭のおかしい奴しかいない」と忌避していましたが、要するに、そこに駆け込むことで洗脳が解けるってわかっていたから、近づけないようにバリアを張っていただけなんですよね。最初は私も、「説教されるんじゃないか」「勧誘とかされるんじゃないか」って、抵抗があって怖かったんですけど、みなさんとても親切で優しいので、大丈夫です。
かえで 親に泣きついても「我慢しろ」って言われるだけだしね。伝えていきたいですね、親より行政。
みずき そうそう。親は自分がしてきたような苦労をさせたがるから。だって自分を否定されたくないんだもん。
あゆこ 親より人権110番とかのほうが絶対良い。
――もう一回、結婚したいと思いますか? みなさんまだ20~30代前半でお若いですが。
みずき 思わないですね。する必要性が見当たらない。
かえで 結婚までにたくさん恋愛したし、それで「この人!」って決めた男性とうまくいかなかったんだから、もう恋愛自体とうぶんしたくないです。45歳くらいになったらまたしたくなるかも。子供が巣立つから。
あゆこ 私は、結婚すごいしたいです! たった一度しかない生涯で、夫との支配的な恋愛関係しか知らずに終わるなんて悔しすぎます。それに、やっぱり私は子供を産みたいんです。みずきさんはどう思ってますか?
みずき うーん、私も子供は欲しいですけど、たった一人の男性を「愛する夫であり子の父であり共同生活者であり」の状態でキープするのって無理だと思ってて。できれば全部、分けたいです。「子種」と、「一緒に住む人」と、「恋人」を別々にしたい。今日このあと、子供が欲しいというゲイカップルとお茶するんですけど。
かえで 彼らのどちらかに子種になってもらって、みずきさんは借り腹をするの?
みずき まだ決定事項ではないですけど、とりあえず話だけ聞こうと思って。条件が合致する男性って結局ゲイなんです。子供が欲しいと望むゲイカップルの精子を私の卵子に受精させて、私が産んで、ゲイカップルと私の3人で育てるプランを構想中です。育児の人手は多いほうが良いし。経済的な面でもお得ですよね。戸籍上は、別の知人男性が「父親役として入籍OKだよ~」と手を挙げてくれているので、そちらも話を聞いてみるつもりです。私たちは人間なんだから、「永遠の愛」という不確かなものに縛られず、理性を持って合理的な判断をしたほうがいいんじゃないかって、思うんです。
かえで 愛し合う男女が子供をもうけて子育てして一緒に年老いてっていうプランは、「愛情」のみに依拠している限り、不安定でリスキーですもんね。
あゆこ 私ももっと冷静に考えなきゃいけないのかな……。でも好きな人の子供がいい。ただ、このまま離婚が成立しても、また「支配する男性」に引っかかってしまいそうな気もするんですよ。そのうえで、「妊娠したい」っていう私の願望は、彼をそういうもので束縛したいのかなって。
かえで 支配できるかどうかはわからないですよね。賭けみたいなもので。それに、まずは紙の上での離婚が成立しないとどうにもならないですし。ダルビッシュ有と山本聖子みたいに、離婚成立後に即効で妊娠となると厄介じゃないですか。
みずき 300日問題ですよね。でも、こっちはそんなに長く待ってられないんだよ、イイ年なんだよ! って思いません? 切り替えが早いんだから、もっと30日とかにしてほしい。閉経までのカウントダウンが始まってるのに、300日って何だよ、卵子何個出せるんだよって。28で割ったら10回は妊娠チャンスがあるのに。そんなのんびりしたこと言って、私の卵子が日々劣化してるこの状況をどうにかしてくれって感じですね。毎月毎月卵子が死んでいくのを指を咥えて見てるのかって。不妊対策として、私はピルを飲み始めました。
1 2