無職も3年たつので、そろそろ一人前かなって感じがするんですよね。会社員もだいたい、3年くらいで自分一人で仕事出来るようになるじゃないですか。僕も最初は、おっかなびっくりの無職生活を送っていましたが、最近は随分、堂に入ってきました。親から借金をしても心が痛まないし……。
そう、近頃、旅行だの、結婚式だの、何かと金が入り用で、今現在の唯一の収入源である原稿料だけでは到底足りず、親から借金を重ねていました。その額、およそ10万弱。親から借りた金でのほほんと遊びほうけているわけですから、全く救いようがありません。
今日も今日とて、親の建てた家で親が働いた金で動くエアコンの風に吹かれながら、親の金をスマホゲームに課金……しようとしていたら、突然、父親が僕の部屋に入り込んできました。
ノ、ノックくらいしてくれよ! オナニーしてたらどうするんだよ……と思いつつ、彼の顔をうかがみると、何やら不穏です。話し出す前から、なんかキレている……。嫌な予感がしたので、なんとかかわそうと思ったのですが、うまい口実が浮かびません。
僕「今から、日課のビリーズブートキャンプの時間だから、あとにしてくれる?」
そんな僕の虚しい嘘を父は完全に無視して、どかっと僕の部屋に腰を下ろしました。こんなこと、今までの28年の人生で一度もなかったことでした。僕の脳内ではすでに非常事態宣言が発令されています。不気味だな。嫌だな。
ところが……そのまま父はいっこうに話し始めようとしません。何か気に入らなさそうな顔で僕を見つめているだけ。そりゃ、無職でニートで借金してるような息子を、ニコニコと眺められても、シャブでもやってんのかなと不安になるだけですが……。にしても、ここ最近の空気感からして、非常に良くない予感がします。このままではマズい。そこで、僕はとっておきのカミングアウトをすることにしました。
僕「実は最近、働いてるんだよ。フリーライターとしてさ。原稿以外にも、対談のテープ起こしとか、データリサーチ・統計資料の作成とかの仕事もやってる。だから借りてるお金もすぐ返せると思うし……」
父「それで、お前は自分で生活出来るくらいの金額を稼いでるのか?」
いや……計算してみるまでもなく、それは到底ムリな金額でした。
父「あのな。好きなことして生きていくのは別にいい。いいが、しかし、お前は一体どういうつもりなんだ? この生活がこれから何年も続けていけるって、思ってるのか? 私も66だぞ。そろそろ働けなくなってきてる。あと1年くらいの間に、どうにかすることを考えてもらわないといけない」
どーーーーーーーーん! おお……! ついに、ついに、恐れていた日がやって来たではありませんか。ラスト・デイ。この世の終わりを告げる、破滅的な「働けバクダン」が、無職ゴールデンシティに投下されました。ドカーン! ぎゃああああああああああああ!
し、しかし、急だな……! 急にそんなこと言われても……。いや、しかし、何も言い返せません。このままじゃ、嫌でも働くことになりそうです。
いや……まだ、まだだ。たしか、先日投稿した小説の選考が、いいトコまで進んでいたはず。今どうなってるんだっけ……と思い、出版社のホームページをあわてて確認したところ……落ちてた!
顔面が、真っ青。おいおい、一体どうすりゃいいんだ……と一晩悩んでみたものの、あまり良い解決策みたいなものが出てきません。それからもう1日悩んで……結局何もかもスパっと諦めることにしました!
こうなったら善は急げです。ズババと頭を切り替えることにしました。早速、小説の執筆に関係しているようなものはゴミに出し、さて、ふと考えました。
一体、どうやって働けばいいんだ……?
空白期間3年
28、無職3年。この経歴。ヤバ過ぎるでしょう‼︎ どう考えてもヤバい。今までこの現実から目を背けながら生きてきたのですが、冷静になってみると、こいつは、ヤバい。一言で言って、終わってる。3年間、ただ一生懸命小説を書いてました! って、どう考えてもイタ過ぎる!
嗚呼……死にたい! 今すぐ死んでしまいたい。しかし、そもそも僕は一体どうしたらいいんでしょうか? 一口に働くと言っても、職種・雇用形態・勤務地などなど様々な要素について具体的に考えていく必要があります。それに、仮に東京で就活するとなると、かかる費用をバイトして貯めるなど……働くことを考え始めて最初に浮かんだのが、ミョンちゃんのことでした。
前回の記事では夜行バスを予約して会いに行くとか言っていたのですが、読者の方の反対もあり、さすがになんかそれはすごくヤバい奴になってしまうのでキャンセルしたのです。で、未だに着信拒否をされてはいるのですが……まだLINEはブロックされていなかったので、夜になってLINEで電話してみました。
無視されるかと思っていたら、一応普通に話を聞いてくれる。それで、一連の経緯を話すと、彼女はしごく冷静な声で返してきました。
ミョンちゃん「書くことをそれであきらめる、という思考もよくわからないし、どんな仕事すればいいかなんて私に相談してくる神経もよくわからない。何? ユメを諦めたから次は私のために働く人生にするって? 奥山君、薄っぺらいのよ。薄っぺらくて、それに、重い。正直、嫌々働くあなたなんかもうみたくないし、そんなのまた同じことの繰り返し、かといってヒモになれるなんて夢見てるなら甘いよね。甘えないで。あなたはあなたのためにあなたの人生を生きて、そこに『私のために』なんていいわけ挟まれるのは、メイワク」
と、言葉でボコボコに殴られてしまいました。うわ~つらい~。
いや~……つらくないですか? 僕は全くつらいですよ。だって正論だもん。本当はちょっとミョンちゃんに甘えたかったんですよ。それなのに……冷たいじゃないですか!
それにしても、父のバクダンは急です。一体何の心理的変化があったのか……? と考えてもわからないのですが、仕方ありません。昔から、父はそういう人なんです。前フリみたいなのがない。まぁ、それはそういう人だから、しょうがないのですが。ミョンちゃんにも何か悩み相談出来そうにないし……。
しかし、普通に考えて僕の今の状況って最悪です。僕が人事採用担当だったら、こんな人間、絶対採用しない。
面接官「三年間、何をしていたんですか?」
どうにもごまかしようがないじゃないか! 「小説を書いてました」なんて……。いや、よく考えたらもう一つ、僕がこの空白期間の間にしていたことがあったぞ。そう、それはこの連載です。
僕「フリーライターをしていました」
どうですか? まだなんか少しマシな感じがしてきたじゃないですか? 希望が出てきました。そして、どんな記事を書いていたんですか? と聞かれたら、颯爽とこの連載のページを……とここまで考えて、これまで書いてきた一連のエッセイを読み返してみたのですが……みたのですが……!!
「働きたくない」「死にたい」「ウソばかりつく」「人に信用されない」これ、見せたら落ちるじゃん! この連載、全然キャリアとして良いアピールにならないのでは……。
絶望、そう、絶望が今、僕の目の前には広がっていました。
どうすればいいんだ……。なんだかんだ、ミョンちゃんに再び相談です。
僕「やっぱり今の僕だと、正社員のクチをいきなり得るのは難しいと思うんだよね。バイトや契約社員から入って……」
ミョンちゃん「そうやって難しいことから逃げるための理屈考えるところから入る奥山くん、すごく嫌い」
僕「そんなこと言ったって、しょうがないだろ……!」
ミョンちゃん「自分の限界自分で勝手に決めて、傷つかないようにしているだけだよ。薄っぺらい人生だよね?」
僕「あのな……」
いや、僕は近頃、ミョンちゃんが何を言っても「そうだね」しか言わないんですよ。だって好きな女の子に歯向かってもしょうがないじゃないですか。でもだんだん、なんだか腹が立ってきて、気付いたら激しい口論になっていました。僕たち、一度口げんかを始めると、山火事みたいに燃え広がって消し止められなくなるんです。やり合ってる最中に、あ、これフラれるな、と気付いたのですが、もう後の祭り。いや、そもそも付き合ってるのかどうかも良くわからない状態なんですけどね(担当編集者注:あれ、付き合ってないですよね?)。
ミョンちゃん「お前みたいな人間は何やってもうまくいかない。小説も絶対ダメだし、就職もダメ、一人で生きて一人で死ね。あなたと過ごした九年間の時間、本当にムダだった。もう二度と連絡しないで」
凄くないですか? 一瞬でなんか色々なものなくしたような気がするんですけど。どうしたもんでしょうか。読者の皆さんからしたらザマアミロって感じですよね!! これから先、どうやって生きていけばいいんでしょうか? よくわかりません。前向きに第二の人生を楽しんでなんて、そんな簡単に切り替えられないし……。
死のうかな?
何か息吸って吐くたびに、心が壊れてく音がするけど! 僕は一体これからどうやって生きていけばいいのでしょうか。どんな仕事を探せばいいんだろう……。28歳、空白期間三年から、人生逆転するにはどうしたらいいのか。というか、もしかして、こういう考え方自体がなんかダメなんでしょうか……? というわけで今回の相談です。
もうこの連載で何度も何度も話題に上っていることですが、やっぱり働くべきなんでしょうか? 何から始めればいいんでしょう? ここから良い具合に就活していく方法がいまいち思い浮かびません。以前募集した仕事については少しずつ進めていますが、ここから糸口を掴めばいいのでしょうか? それともこの無職道を突き進んで、小説家になる夢を追えばいいのでしょうか? それともコメントでついているように野たれ死ねばいいんですか? KENJIさんの言うように、無職無農薬野菜でも作ればいいんですか? ミョンちゃんを諦めて、新しくヒモになれそうな女性と付き合えばいいんですか? 誰か養ってくれませんか?
人生、どうすればいいですか? こんなどうしょうもない無職の相談に付き合いきれないという方が大半だと思います。でも、どうか見捨てないでください。忌憚ないご意見をなにとぞお聞かせください。もう全然、笑えなくなってきました。