2013年9月現在、Amazonで「how to sex」と検索すると140冊以上の日本語書籍が検索結果にあがってきます。これほど多く種類のある「ハウツー・セックス本」のなかでも、近年最も注目されているのが産婦人科医、宋美玄(そん・みひょん)先生の『女医が教える本当に気持ちいいセックス』でしょう。2010年に発売された本書は、現在までにシリーズ累計100万部を超えるベストセラーになり、電子書籍やコミック版、『上級編』や『スゴ技編』といった各種のバリエーションを含めて現在も売れ続けている大ヒット・シリーズとなっています。
これまでに女性の筆者が書いた「ハウツー・セックス本」がなかったわけではありません。しかし、本書の斬新さは医学や生理学的なアプローチによって、セックスの知識が科学的に裏付けられている、という圧倒的な信頼感にありました。本書が示した「性科学」の知見は、著名なAV男優などの「経験則」を超えるインパクトがあった、ということです。そのインパクトは、DVD版『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』でも同様です。
「女性経験が少ないわけではなく、セックスの知識もいろいろ知っている。女性が演技をしているのだって知っているし。けれども、あのコとかあのコとか喜んでくれたし、セックスが下手なわけじゃないハズ……」。私自身、アラサー既婚男性の一人として、本作を見るまでそんな自負があったのですが、単なる一個人の経験則など、科学を前にすればとても貧弱なものです。DVDを見ながらセックスに関する男の自負がどんどん弱まっていくのが実感できる、ある意味恐ろしい作品でした。
女がイケないのは男のせいだったのか…!?
DVD2枚組(計100分)のうち、1枚目の50分は女性をオーガズムまで導くための案内となっています。射精があるのでわかりやすい男性のオーガズムと違って、女性のオーガズムはパッと見ではわかりにくく、女性誌のアンケート調査などを見るに「イッたことのない女性」も相当数存在することがわかります。人間というのは大体自分の都合の良いように考えがちですから、男性が「イケない女性もいるのではないか(彼女がイカないのは自分が悪いのではなく、彼女がイカない体質だからなのでは)」と思ってしまったり、女性自身も「自分はイケない体質なのではないか」と思い込んでしまうことがあるでしょう。
しかし、本作は力強く「すべての女性は必ずイケます」と力説している。良いですか、すべての女性は必ずイケるのです!
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