messyではしばしば、女性のオナニーについて取り上げてきた。セックスはともかく、オナニーは完全に「個人作業」であるために、秘め事とされてしまい、暗い場所に追いやられがちだ。でも、オナニーの材料(おかず)や道具(グッズ)に関する情報、あるいは「やりすぎるとアソコが黒くなる?」といった類の心配事を払拭する情報が、明るく見えやすい場所にきちんと置かれている世の中であってほしい、と考えている。
<性を表通りに誰もが楽しめるものに変えていく>をコンセプトに、革新的な技術で性とオナニーの未来を切り開いている株式会社TENGAが、新感覚の素材とデザインが魅力的な女性用ローター「iroha」を発売したのは、2013年のことだった。同社はこれを「セルフプレジャーグッズ」と呼び、その後も女性が安心、安全に、リラックスして気持ちよくなれるツールを次々に送り出している。
そして初代「iroha」リリースから3年近く経過しようという頃、満を持して新作「iroha+(イロハプラス)」三種類が登場した。ふんわり・しっとりした独自の肌ざわりはそのままに、振動パワーやリズムパターンが増強され、お風呂の湯船の中でも楽しめる優れた防水機能を搭載した、まさに「プラス」な商品群だ。この3年間で、女性たちのオナニーは、そして女性の性を取り巻く視線や価値観はどう変化してきたか? 同社の広報宣伝部で活躍する工藤まおりさん(24)に聞いた。
新卒入社から1年で転職
――工藤さんはもともと人材業界で営業の仕事をしていたところ、「iroha」に惚れ込んでアダルト業界のTENGA社に転職されたんですよね。
工藤 そうなんです、前職のとき初任給で「iroha」のYUKIDARUMAを購入したんですよ。マスターベーションで「挿入する」ってことが自分ではなかったので、YUKIDARUMAの特徴でもある「先端挿入」をちょっと試してみたいなと思って。まず開封して触ったときにふわふわさらさらの肌触りにびっくりしたんですよね、それまで安いローターしか触ったことがなかったので。
――硬いですもんね、ピンクローターや電マは。
工藤 irohaを使用してみて、こんなに心地良いアダルトグッズがあるんだとびっくりして、同僚にも紹介したりしていたんです(笑)。そんなに堅い職場ではなくて、雑談でオープンに性の話をしたりできたので。そうしたら、前職では3カ月に一度上司との面談があったのですが、「工藤は仕事してるときも楽しそうだけど、アダルトグッズの話をしてるときが一番楽しそうだよね」って言われて、自分でハッとしたんです。そういえばそうだなって。学生時代に就職活動をしていたときは、アダルトグッズ業界は考えていなくて、あくまでも消費者、いちユーザーとしてグッズを楽しんでいたんですけど、こんなに自分が心躍るものがあるのなら、その魅力を世の中に伝えるお仕事に就くのもアリなんじゃないかと。
――でも「好きだから」で採用されるものでもないじゃないですか。よく、転職活動に成功されましたよね。しかも新卒1年で。
工藤 毎月TENGAの求人情報が出ているかどうかをチェックしていて、やっと求人が出たと思ったら募集要件に「広報経験3年以上」と書かれていました。私は営業経験1年未満、かすってもいませんでした。しかも畑違いの人材営業。でも、人材業界だったので、求人票に書かれている通りの人が実際に採用されるとは限らないということも知っていました。もしかしたら熱い思いを伝えればいけるんじゃないかと一縷の望みを持って……。
――熱い思いを!!
工藤 でも、書類で落とされてしまってはそれを伝えることも出来ません。どうしても入社したいと思い、周囲にTENGAとつながりを持つ知人がいないか探したところ、偶然、知り合いが私の今の上司である広報宣伝部の部長に会ったという話を聞いたんです。その知人に無理を言って、面接だけでも受けさせてくださいとお願いして面接にこぎつけました。
――その計画性というか根回しも含めて熱意ですね。面接ではどのようなプレゼンをしたんですか?
工藤 小さな頃から私は性に対する関心が強い方でした。ただ、オープンにそういった話をすると、周囲から「変な女」とか「エロい女」と見られることが少なくありません。セックスもマスターベーションも皆さんしていること。顔を背けることではないのになぜだろう、とずっと疑問に思ってきました。株式会社TENGAは世の中の視点、考え方を変えていこうとチャレンジングで、今までグレーゾーンだったイメージをポップ、身近なものに変えてきた革新的な企業です。株式会社TENGAだったら私も昔からの疑問をぶつけて、マスターベーションをブラックボックス化している社会を変えていけるんじゃないか、って……こんなに長く話しちゃって大丈夫ですか?
――すごい熱量伝わりました。