あちこちで、その胡散臭さに注目が集まり始めている〈誕生学〉。〈生まれてきたことが嬉しくなると、未来が楽しくなる〉をコンセプトに、〈いのちのストーリーをロマンチックに伝えるメソッド〉を提唱している、教育プログラムです。
当連載にも度々登場する『子どもを守るために知っておきたいこと』(メタモル出版)でも取り上げられている物件で、その章を執筆した精神科医の松本俊彦氏は、誕生学が「10代の自尊感情低下からくる課題を改善するべく、生命尊重学習からいじめ・自殺・性被害と予期せぬ妊娠予防などは、学校と連携」していることを逆効果であると指摘(その章はまるっとBLOGOSで無料公開されているので、ご興味あるかたはぜひご一読を!→「誕生学」でいのちの大切さがわかる?)
産婦人科医の宋美玄氏も、巷で次々発生している誕生学への批判をまとめつつ、「自己肯定感が上がると言うには根拠が不十分」「大人の自己満足になっていないか」とつづっています(「誕生学」に疑問 生きづらさを抱える子を追い詰めるのはやめて!)。
そんな具合にトンデモな気配漂う誕生学ですが、実際にはどのようなことがレクチャーされているのでしょうか? 実は私は某所で開催された〈誕生学入門講座〉なる催しに参加したことがありますので、今回はそのときのことをここでご報告させていただきましょう。
涙ぐみながら出産を語る
産後のお母さん向けとして誕生学入門講座イベントが催されたのは、都内の某育児用品店にて。ショップのHPには、こうありました。
“「うまれてきてくれてありがとう」の気持ちを伝えられるようになるための、はじめの一歩として、まずあの日の出産を思い出してみませんか。”
講師は〈公益社団法人誕生学協会認定誕生学アドバイザー〉という肩書の女性です。
学校などで行われるという子ども向けプログラムと異なるだろう点は、「自分のお産を語る」というイベントが組み込まれていることでしょう(バースレビューという、いかにもお洒落な名前がついています)。講師は「5歳までの子どもの8割が、自分が生まれてきたときのことを親に質問する」のだといいます。そのとき、自分の体験を含め、誕生をどうやって伝えるのかをあらかじめ整理しておきましょうという狙いがあるようです。
不意打ちで聞かれると、つい、いかに大変な思いをしたかという武勇伝になりがちなのだとか。うん、それは何となく納得。そこからさらに、もし出産につらい思い出があっても、改めて口にすることで自分の気持ちと向き合うことができるので、出産時の思い出を子どもへ語るとき、また違ってくるのでは? とのことでした。