セックスがもたらす、快楽や安心感、そして一体感や征服感……。人によってどんな魅力を感じるかは違いますが、中にはセックスだけはピカイチだけどその他はまるでダメな男に惚れ、そのセックスから離れられなくなり、人生そのものが狂ってしまったという女性もいるとか。それほどまでにセックスが魅力的なものになる場合もあります。
しかしながら、そんなセックスに一切の魅力を感じないという女性も、当然存在します。彼氏がいてもいなくても、「セックスは子づくりをする時のみでいい」という持論を掲げている私の女友達もその中のひとりです。
彼女はセックスで性的快感を得ることが一切なく、挿入されると途端に気分が悪くなり、ひどい時には嘔吐してしまうという筋金入りのノー・セックス派です。そんな体質の彼女でも、以前お付き合いした彼の欲求に答えるために頑張ってセックスした経験があるそうですが、セックス後に毎度のように嘔吐したり具合が悪くなって寝込むことを繰り返していたとのこと。
最初は「まだ体がセックスに慣れてないだけ。だんだん気持ちよくなるよ」と自分のテクニックで彼女を変える気満々だった彼も、一向に感じることなくむしろグロッキーになっていく彼女の様子を見て、ようやく体調を心配し始め、セックスを求めてこなくなったそうです。彼にやっとわかってもらえた、と彼女が一安心していたところ、彼が浮気をしていることが発覚し、2人は破局しました。そんな苦い経験もあり、彼女はお付き合いする男性にはまず性欲の弱さを求めるようになったとか。
キスやハグだけで十分満たされるし、デートしたりしてただ一緒にいるだけでいいという彼女ですが、前述のようにその思いが伝わらず、うまく男性とお付き合いできないと悩んでいた時期が長くありました。最初は理解してくれているようでも、時が経つに連れて「フェラで抜いて」「手コキだけでいいからして」と彼女に欲求をぶつけてくる男性が多かったそうです。手コキならまだできるという彼女ですが、フェラは絶対に無理。そういった状況で彼の要求を拒んだ時、彼女はセックスができない自分を責めるとともに、それを理解してくれない彼のことも責めてしまい、とても辛い思いをしたそう。ここまでセックスを受け入れられないとなると自分の体に異常があるのでは……と考え、婦人科の診断を受けたこともある彼女ですが、何の異常も見られなかったとのこと。そこから彼女は、自分とセックスの付き合い方を真剣に考え始めたそうです。
今の彼女は、セックスできないことを理解してくれる人じゃないと付き合わないと固く決意をし、吹っ切れた様子。「男の人に性欲があるのは当たり前のことだけど、私に性欲がないのも当たり前なの。だから、私と同じ“当たり前”を持ってる男の人に出会えるまで待つ」と彼女は言います。確かに、性欲があるのもないのも、言ってみれば本人にとっては至って当然のこと。セックスするのが正義! とか、セックスしないのはダメ! というルールはないはずです。
冒頭にも書いたように彼女は、いずれは結婚して子供を産むことを希望しており、その時には嫌いなセックスも頑張りたいと考えています。セックスに魅力を感じない自分を受け入れつつ、自分が求めるものに応じてセックスに臨む。理性と本能が入り交じった、妙に人間らしいスタンスだなと感じました。セックスが好きでも嫌いでも、人間として生まれた以上セックス絡みの壁にぶち当たることがあるはず。そうなった時、彼女のように自分のセックスの価値観を客観的に分析することで、セックスとの付き合い方がわかってくるのかもしれません。
(リオネル・メシ子)