1月19日、世田谷区のとある学校で開催された「LGBT成人式」。実際の式の模様を、後編ではご紹介します(前編はこちらから)。
約200名もの参加者が集まった成人式は、13時ちょっと過ぎにスタート。オープニング映像が流れ、LGBTをカミングアウトして執筆活動や講演などを続ける杉山文野さんによる開式の辞に続き、世田谷区の保坂展人区長が祝辞のために登壇。「自分を肯定するのは大事なこと」など、来場者にエールを送っていました。
そしてハタチの音大生、FTM(Famale to Male 体は女性だけど心は男性)の丸山さんが、
「かつていじめの標的にあい、いつしか自分の殻に閉じこもるようになった。でも高校のサッカー部の友人たちと、高校時代の彼女がその殻を破ってくれたし、大学に進学してからも周りが受け入れてくれたことで、ありのままの自分を出せるようになった。これからはもっと世界を広げ、自分を変えていきたい」
続けて、昨年も参加した大学4年生のスバルさんが、
「初めて同性を好きと自覚した大学生のときは、『周りに嘘をついている』と自己嫌悪に陥った。でもここに来てはじめて、10年後の自分の隣にはどんな人がいるのかを想像できるようになった」
と新成人の辞を述べると、その言葉に共感したのか、参加者たちの空気は最高潮に。約1時間という短い間だったけれど、終始和やかな雰囲気に包まれていたのが、とても印象的でした。
「自分のことを話す機会はあまりないけれど、LGBTを知ってもらうことで理解が深まると思うから、聞いてくれればどんどん伝えていきたいと思う。自分の道を自分で受けとめる覚悟もできたから、今は何があっても『大丈夫。くじけない』と言えるようになりました」
式が終わったあと、こう語った丸山さん。他県で行われた地元の成人式には、両親からの要請でしぶしぶレディススーツで参加。「自分の気持ちを折らなくてはいけなかったけれど、今日は好きなスーツを着て来れたのが嬉しい」と、笑顔で答えてくれました。
一方の袴姿のスバルさんは、新成人としての辞を述べるにあたり、自分自身とじっくり向き合い、そこで色々なことを考えたのだとか。
「マイノリティに不寛容な社会への憤りを持っていた時期もありましたが、怒るのではなく『成人式にはどんな服装の、どんな人がいても当たり前』と思えるようになればいい。そのために自分はどんな仕事についたらよいのかなど、未来を考えるようになりました。ゆくゆくは“LGBT”という言葉すら、世界からなくなってほしいと思っています。そのために自分は当事者として、さまざまな悩みを抱えた若者を教えて育む仕事に就きたい。それが目標になりました」
確かに今の社会には、「女なのにあんな服装して」「男のくせに、仕草が女くさいよね」などなど、何気ない言葉や思いのなかに偏見が混ざっているのは紛れもない事実。でもこれから社会に出るLGBTたちの覚悟とパワーがあれば、そんな偏見をなくしていけるかも。
そう思わせてくれる若者たちに出会い、アラフォーおばちゃんの私もなんだか頼もしい気持ちになりました。新成人じゃないけど、今後は誰に対しても「なんでそんな格好してるの?」という言葉を封印することを、まずは中年の誓いにします!
(文=久保樹りん)