スポーツ実況inJAPAN
私はスポーツに関してはとんと不調法者でして、ほとんど拝見することもないのですが、フィギュアスケートとなると、話は別です。競技ルールに関してはちっとも詳しくないし、ルッツ・ジャンプとフリップ・ジャンプの見分けすらつきません。けれど、古くはターニャ・ハーディングとナンシー・ケリガンの戦いの時代から、このスポーツに私は魅了されてきました。
先週は、日本の19歳、羽生結弦選手がフィギュアスケート日本男子としては初の金メダルを獲得しましたね! それも、ショートプログラムでは世界最高得点、史上初の100点超えの演技で。ワタクシ、テレビに張り付いて観戦しておりましたが、非常にありがたいものを見せていただいた気持ちでいっぱいでした。ありがたい、というのは、羽生選手が人智を超えた存在のようで、彼の背後にキラキラとした後光が射して見えたからです。五条の橋で弁慶の上をひらり、ひらりと飛び越える牛若丸も、こんなかんじだったのかなぁ……、と。
インターネットで調べれば良いが…
このようにテレビでフィギュアスケートが拝見できるのは、非常にありがたいことではあるのですが、同時に、私はいつも、ある種のもやもやも感じます。それは日本のフィギュアスケート実況・解説の、圧倒的情報量の少なさに対してです。
例えば、羽生結弦選手がフリープログラムでお召しになった衣装は、ジョニー・ウィアー氏のデザイン。ジョニー・ウィアー氏といえばトリノオリンピックとバンクーバーオリンピックで入賞した米国の元フィギュアスケート選手です。その衣装は、ピンクと緑の宝石が散りばめられたようなデザインが印象的でしたが、ピンクと緑は、羽生選手のラッキーカラーなのだそう……(注1)。
などなどの情報を、私インターネットから得たんですが、もうちょっとその辺の情報も与えてくれるような実況と解説を、テレビでもやってくれないものかしらね~? なんて、思っちゃったワケですよ。
「ふん、これはあくまでもスポーツの実況。衣装のことやラッキーカラーのことなど解説する必要などないわ!」というのが理由だとするならば、ジャンプやスピンの採点に関する解説は、足りていると言えるでしょうか。今回、羽生結弦選手、フリーの演技では2回ジャンプの着地に失敗しながら、金メダルを獲得したじゃないですか。それは見ていてとても嬉しかったし、羽生選手の演技には、文句なしに金メダルの価値があると思います。が、具体的には何がどーなって2位のパトリック・チャンに勝ったの? そのあたりの詳しい採点のことだって、知りたいじゃあないですか。
「フリーの得点が高かったから……?」
「チャン選手は3回ジャンプに失敗したからじゃないの?」
ってくらいなら私にだって思いつくんです。そうではなくて、フィギュアのど素人の私にはわからない、競技の細かい部分、採点やらなんやらに関する解説をしてもらいたいのです。けれどテレビの実況・解説では、ジャンプの種類くらいしか教えてくれません。
再度インターネットへ。各選手のジャンプの種類と得点を表にしたページを参照(注2)しました。このページはカーソルオーバーで加点・減点まで出る親切設計です。
ふむふむ。羽生選手は、4回転ジャンプの次に得点の高いトリプルアクセル、しかもコンビネーションを、二度、決めているのね……。対してパトリック・チャン選手は、トリプルアクセル(コンビネーションではない)をプログラムに一回しか組み込んでいなかった。なのに、その一度のトリプルアクセルを失敗……。なるほどー、だからフリーでも羽生選手の総得点のほうがチャン選手より高かったのかー。と、分からないなりになんとか解釈をひねり出してみたものの、いかんせんど素人なもので、この理解で正しいのか判断がつかない。解説の人、教えて! って思ってしまうのです。
ジョニー・ウィアーの解説
私はこのオリンピック、米国でフィギュアスケートの観戦ができる人を心から羨ましく思います。なぜなら、米国NBCSNのフィギュアスケート解説者は、タラ・リピンスキー氏(1998年長野オリンピック女子シングル金メダリスト)と前述のジョニー・ウィアー氏だからです。この2人はGlitter Twins(意訳:スパンコール姉妹)と異名をとるほど衣装に凝りまくって解説に挑んでいます。特にウィアー氏は毛皮のコート、金のマトリョーシカと金のチェブラーシカのリング、ホットピンクのビンテージジャケット、総スパンコールのジャケット、蝶ネクタイ、ミラーボールのような靴、などなど、毎日変わるど派手な衣装だけでも話題を呼んでいます。選手時代同様、コメンテーターになってもショーマンシップを忘れない両氏の姿勢が素晴らしいと思います。
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