韓国の代表的なコンドーム製造メーカー「ユニダース」の代表は、「韓国は経済協力開発機構(OECD)加盟国中、コンドーム使用率が最下位クラス」(東亜日報)と、語ったことがある。昨年秋にはソウル経済新聞もユニダース代表の言葉を裏付けるような記事を残しており、その中では「韓国産のコンドームは優れていると世界で認知されている反面、韓国人はコンドーム自体に対して相対的に否定的だ」と分析している。
韓国のポータルサイトなどでは、“コンドーム”という言葉を検索するために成人認証が必要だったりする。また、とあるソウルの女子大では、学生委員会が主催した性教育に関する展示会が、教授陣や警備員によって強制的に中止に追い込まれる珍事件も起きている。展示会ではコンドームが販売されていたそうだが、即刻、没収されたそうだ。教授陣は、
「こんなもの(コンドーム)は、本来であれば日陰にあるべきものなのに! よりによって女子大で販売するなんて!!」
と激高したと、地元のメディアは伝えている。
韓国人とセックスの実態は詳しい統計がないため定かではない。が、韓国社会ではセックスの話題を大っぴらに話すことは、恥ずべきことだという認識が一般的。これは儒教的価値観が強い中高年世代が、現在でも人口構成比上で多数を占めているためかもしれない。セックスのための道具であるコンドームについても、あまり良いイメージがないようだ。
では、韓国人はどのようにして避妊しているのか。いや、そもそも避妊していないのか……? 当連載における韓美姫さんの記事でも、たびたび避妊をせずにセックスに臨む韓国人男性たちが報告されている。
高い中絶率
性に対して閉鎖的な社会的背景の中では、性に対する正しい知識や避妊方法などがしっかりと教育されにくい。そのためか、インターネットなどで性的な刺激に気軽に触れられるようになった韓国の若年層の間では、望まぬ妊娠と中絶が増えているという。平たく言えば、恥ずべきものだから語らない、語らないから教育されない、教育されないから避妊しないセックスが増える……といった状況のようだ。
さらに、避妊に関する意識の薄さは、小中高生に限ったことではないという点も明らかになりつつある。2010年度に行われた日本の妊娠中絶手術の総数が約21万件なのに対し、韓国は17万件。人口比率で見ると、韓国のほうがはるかに高いという結果で、これは衝撃的な統計だ。
加えて、近年の韓国の医療関係のニュースを見ると、“違法堕胎手術”市場が、数多く摘発され始めている。明らかにされた実態によると、妊娠後期の違法中絶や、密かに流通している不法堕胎薬が莫大な利益を挙げているそうだ。それだけ、避妊をしなかったがための望まぬ妊娠が多いことを意味する。
「韓国男子の避妊感覚はどうなの?」と問われれば、あまり無責任なことは言えない。おそらく、しっかり避妊するマナーのある紳士も多いはずだ。正直、人それぞれと言わざるをえない。
コンドームについても、韓国人は否定的だとしつこく書いたが、日本と同様、コンビニなどでも普通に買える。ただし、これまで書いた内容のように、避妊への感覚が低いという統計は無視できないだろう。月並みな結論で恐縮だが、旅行に行ってカンナム(江南=ソウルのセレブエリア)あたりのクラブで遊びたい女性がいるとしたら、何かしらの防御策を自分で用意したほうが良いかもしれない。
■河 鐘基/エンターテイメントから政治まで、韓国の社会問題を広範囲に取材。雑誌やウェブ媒体を中心にライター活動を展開中。K-POPも好きだがAKB48の方が好きという、韓流ライターにあるまじき趣味を持つ。さらに正直に言えば、ローラのほうが好き。