女子小学生(JS)向け雑誌「ニコ☆プチ」(新潮社)で活躍する読者モデルらが原則無給でモデル業に勤しんでいることは先日messyでも報じた通りだが、今度は人気モデルの“くみっきー”こと舟山久美子と、“まあぴぴ”こと松本愛が、読モの薄給ぶりをテレビで暴露し話題を呼んでいる。
ふたりは5月27日放送の『中居正広のミになる図書館』(テレビ朝日系)に出演した際、「モデル業界の厳しい現実をスクープ」として、「読モは人気が出れば出るほど赤字になる」と暴露。読モはメイクもスタイリングも全部自前でやることが多いため、出費がバカにならないのだという。
くみっきーは「人気が出るとページ数は増えるけど、30体組まないといけない私服企画とかも自前。1企画30万円とか飛んじゃうこともありました」と語る。確かに人気が出れば誌面に登場する機会は増える。しかしあくまでも読モであるがゆえに、スタイリストがつかず、自前で最新のファッションを用意し持参しなければならないようだ。もちろん、ブランドからアイテムを提供されることもあるが「そうするとブランドが偏っちゃう。リアルを突き詰めないといけないので、ちゃんと買っています」と、それだけでは賄えない背景についても明らかにした。
さらに、ギャラが発生したとしても「雑誌だと時給制になるので……」とのこと。なんと彼女たちにはページ単位でギャラが発生するのではなく、アルバイトのように時給制で働いているというのだ。「時給1,000円なので、好きじゃないとできないお仕事」とその金額も暴露している。人気の読モも、首都圏の深夜のコンビニバイトより安いギャラで働いているということになる。
まあぴぴについては「ナウで時給1,000円。朝の5時半集合で夜10時とかまでお仕事しています」と現在でもかなり厳しい条件でモデルをやっていることを明らかにした。お昼休みなど考慮せず単純に労働時間で計算すれば、その場合1万5,500円が日雇いのギャラとして発生することになるが、実際には「最近は経費削減とかで1日やって1万円くらい」なのだという。先にくみっきーが述べた通り、リアルなストリートコーデを提案する読者モデルには、それだけ経費もかかる。一カ月の労働日数を約20日とすると月額20万ほどのギャラが発生することにはなるが、経費を差し引けば儲けはかなり少なくなるはずで、それだけで独り暮らししていくのはほとんど不可能になるだろう。
くみっきーも、まあぴぴも、現在はともに芸能事務所に所属し「Popteen」(角川春樹事務所)で活躍するモデルであり、くみっきーは携帯電話やコスメのCM、PVにも出演している。しかしキャリアのスタート地点となる読モの仕事は相当に厳しい。そのためか「みんなが憧れるのがプロデュース業」と、くみっきーは続けて明かす。コスメやファッションアイテムをプロデュースすることで、その商品の売り上げに応じて決まったパーセンテージの収入が得られるという。もちろんプロデュース商品が売れるためにはそのモデルにそれなりの人気がなければならないし、読モとして人気を確立できてはじめて、こうした仕事が舞い込むのであるから、読モの仕事は人気が出るまでは金銭的にやはり厳しい。
というか、読者には名前が周知され、タレントとして事務所に所属するまあぴぴですら、現在でも時給1,000円(またはそれ以下)でモデルの仕事をしているのであるから、人気が出てもモデル以外の仕事に頼らなければならないほどキツい仕事なのである。
読モには普通のモデル以上に“リアル感”が求められていることは確かだろう。読者と同じように、もともとはその雑誌のファンという立ち位置からスタートした存在であるがゆえに、読者の憧れの存在であると同時に、読者に親近感を与える存在でなければならない。そのため、雑誌が提案するファッションの方向性とは別に、そのモデル自体がそれぞれに特色を持ったファッションを打ち出す必要も生まれてくる。ふたりが語ったように、人気が出れば出るだけ露出も増えるため、誌面に割く労力も増えていく。まったくもって割に合わない商売だ。なんとしても売れっ子モデルになる、という覚悟があるもの、実家のサポートがあるものしか生き残れないのではないだろうか。
厳しい世界であるがゆえに、競争も激しく、淘汰されていくモデルたちも多いだろう。出版社側の、一般人にほど近い読モの立ち位置をうまく利用し制作費を抑えているという事情も見える。しかし雑誌の人気を支えているのは看板モデルだけではない。こうした読モも多分に売り上げに貢献しているのであるから、今回のくみっきーらの暴露が、読モの待遇向上につながれば……と、長引く出版不況という事情を知りつつも願ってしまう。
(読モウォッチャー京子)