はあちゅうを好きか嫌いか
永子「はあちゅうさんの発言する『王子様を求めてます』『男の収入は大事』『口説きたいならワリカンなんてありえない』といった一連の内容について、アラサーの女性たちは内心そう思っていても“傲慢と受け止められ非難されるかもしれない”と懸念するからか、声に出さない方が多いと思うんです。はあちゅうさんはそういった危惧を持たないのかはたまた気になさらないのか、わりと平気で発言しているように見える。時に炎上して叩かれ傷つくことももちろんあると思うのですが、私は、それを言えちゃう素直さが、やっぱりはあちゅうさんの一番の強みだと思う。たとえ理想を持っていたとしても、人ってあまり素直に言えずに虚勢を張りがち。特に王子様が~みたいなファンタジックな恋愛観は、嘲笑を受けることが少なくないですから」
はあちゅう「もう今、大笑いの的ですよ(笑)」
永子「でも、そこを『しょうがないじゃん、女子はそう思ってるんだから!』って乗り越えていけちゃうのがすごいところですよ。そこの素直さが本当にいい。先ほどのスクールカーストのお話で出たように、他者からの見え方をすごく気にする一方で、言いづらい本音を素直に言えちゃうっていう、そこのギャップが興味深いんです」
はあちゅう「ありがとうございます。面白いって言っていただけるのはうれしいことですね。そういう心のひっかかりをもたらしたり、他人のザワつく部分に私の言葉が触れると、私自身が誰かの記憶に残る存在になると思うんです。すんなり気持ちいいものって、喉ごしはいいけどすぐ忘れちゃうじゃないですか。『このちょっと気持ち悪いのは何だろう』って誰かに思ってもらうことで、誰かの記憶に留まりたいっていう気持ちが、ありますね」
永子「矛盾する恋愛観、夢見る乙女っぽさと強かな側面、一方で自己分析や情報処理に長けた一面。はあちゅうさんの書いたものを読んでいると、いろんな情報が多面的に入ってきて混乱するんですよ。それは伊藤春香さんとはあちゅうさんの違い、なんでしょうか」
はあちゅう「ホントそうだと思います。私がこれまで炎上に耐えられたのも、はあちゅうって名前があるおかげだと思います。伊藤春香は引っ込み思案だけど、『はあちゅうだったらこう書くだろうな』って思うと、ポンって投稿できるんです。はあちゅうに助けられてるところは多々ありますね。要するに、かまってちゃんなんだと思います。好かれるにしても嫌われるにしても、誰かの記憶に残るってことは『無関心以上の関心』を持ってもらってるということなので、私にとっては意義があるんです。はあちゅうを好きか嫌いか、でいて欲しい」
永子「それはそうですよね、せっかく表立ってやる以上は。私もペンネーム作っておけばよかったかもな。私は『40歳、非婚、非出産』というプロフィールなので、世の中のおっさんにガーガー言われるわけですよ、いつぞやの都議会議員みたいに。まあ、おっさんに言われる分には『うるせえ』だけでいいんだけど、一番メンドくさいのは、結婚して子供もいるんだけど上手くいってない女の人たち。『子を産む責務を果たしてないのに伸び伸び生きやがって』みたいな、同性からのやっかみが一番すごいですね。私が自由に生きれば生きるほど、この人たちが集団になってヒステリーを起こすのがムカつく……とか書いちゃうとまた怒られるんだけど(笑)」
はあちゅう「私ははあちゅうと伊藤春香のギャップがありますけど、永子さんは、コラムとご本人の間にブレがないですね」
永子「すみません、丸出しで(笑)。私、20歳くらいのときから何も変わってないんですよね。ずっとこのまま」
はあちゅう「そのマインドを身につけたら、私も多分、すごく楽になれるような気がします」
永子「そうかも。対談してみて、はあちゅうさんの不思議なところがいろいろわかったような気がします。はあちゅうさんが私の歳まであと12年か。何となく、そのときが楽しみです」
はあちゅう「12年後かあ……。1回結婚しているんだけど、もうすでに離婚してるっていうのが、私の描く未来予想図ですね(笑)。今日はどうもありがとうございました!」
永子「こちらこそ、無茶な炎上対談(笑)を引き受けていただき、ありがとうございました!」
(構成/桃山商事・清田代表)
■はあちゅう(伊藤春香)/ブロガー、作家、ソーシャル焼き肉マッチングサービス「肉会」代表。 『はあちゅう』というキャラクターを活かし、在学中からブログや講演など幅広く活躍する。 2009年慶應義塾大学法学部卒業後、電通に入社。その後2011年にトレンダーズに転職し現職に。 近著に『自分の強みのつくりかた』(Discover21)、『アドガール大手広告代理店新人日記』(主婦の友社)がある。Twitterは コチラ。
■林永子(はやし・ながこ)/1974年、東京都新宿区生まれ。武蔵野美術大学映像学科卒業後、MVを中心とした映像カルチャーを支援するべく執筆活動やイベントプロデュースを開始。現在はライター、コラムニスト、イベントオーガナイザー、司会として活動中。
連載:ナガコナーバス人間考察
■清田代表/二軍男子で構成された恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表。失恋ホスト、恋のお悩み相談、恋愛コラムの執筆など、何でも手がける恋愛の総合商社。男女のすれ違いを考える恋バナポッドキャスト『二軍ラジオ』も更新中。コンセプトは“オトコ版 SEX AND THE CITY”。著書『二軍男子が恋バナはじめました。』(原書房)が発売中。
連載:桃山商事のクソ男撲滅委員会