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ブラックジブリで生み出された『思い出のマーニー』が描く少女たちの特別な関係性

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『思い出のマーニー』公式HPより

『思い出のマーニー』公式HPより

 7月に公開されたジブリ映画最新作『思い出のマーニー』。ご覧になられた方も多いことかと思います。宮崎駿と高畑勲という二大巨匠が制作に一切関わっていないはじめてのジブリ映画として話題となりましたし、映画館には足を運ばないまでも、本作の公開にあわせて放送されたドキュメンタリーだけは観たという方もいるかもしれません。私も映画本編を観るより先に、美術監督として制作に参加した種田陽平を追う『プロフェッショナル仕事の流儀』(NHK)を観ていました。

 種田は、もともと実写映画の世界で活躍してきたクリエイターです。その名前を知らない映画ファンでも、栗山千明とユマ・サーマンが死闘を繰り広げる舞台となった「外人が考える間違った日本情緒」に溢れる料亭(『キル・ビル Vol.1』)や、岩井俊二の『スワロウテイル』に登場するアジアのどこかにありそうだけれどどこの国とも言えない不思議なバラックで、彼の仕事を見ているはずです。NHKのカメラは、徹底した細部へのこだわりによって、独特な世界を構築する仕事ぶりが、アニメーションの世界でも貫かれていたことを伝えています。

 そこでは制作の追い込み時期になっても、ギリギリまでアニメの登場人物の背景となる絵を見直し、手を加えていく種田のクリエイターとしてのポリシーが浮かび上がります。それを「ああ、こういう信念の持ち主が『真のクリエイター』なのだな……」と感心させるのが番組の意図でしょう。ただ、私は「すごいなー」という感想を抱きつつも、同時にちょっとした寒気も感じてしまったのです。

 納得できていない絵の細部を修正したい旨を、種田が監督の米林宏昌に直談判する場面が特に恐ろしい。ここで修正に入れば、スケジュールの遅れが発生しかねないカツカツの局面で、米林は簡単には修正にGOサインを出しません。そもそも米林には「この背景のどこに問題があるのか」がピンときていない。そこで引き下がらず、種田はダメだと思うポイントをしぶとく説明し、米林はほとんど根負けしたかのようにOKを出します。そしてすぐさま修正に入る種田の背中をカメラは追っていく……。

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カエターノ・武野・コインブラ

80年代生まれ。福島県出身のライター。

@CaetanoTCoimbra

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