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食欲の秋、料理漫画の「おいしい根拠」に萌える!

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三位一体のハーモニー!(イラスト/別珍嘆)

三位一体のハーモニー!(イラスト/別珍嘆)

大きい鍋のサイズ

 料理を作る時、みなさまはどのような情報を活用されているのだろうか。

 テレビの料理番組、雑誌やネットに掲載されているレシピ、家族より受け継ぐ伝統の調理法、行きつけのお店のシェフより聞いた「あっ」と驚く秘訣、などなど。参考にする情報は数あれど、実際にトライしてみたら、いまいちで、がっかりしたという経験を持つ方もいることだろう。

 その際、レシピやアドバイスが悪いと文句を言うわけにもいかないのは、近隣のスーパーで手に入る食材に限りがあったり、予算の都合があったり、自宅に調理器具が揃っていなかったりと、個々の環境がレシピを再現できる状況にはないケースが多々あるからだ。

 うどんのパッケージの裏側には「なるべく大きな鍋でお湯を沸かし、茹でることがおいしさの秘訣」と書いてある。「なるべく大きな鍋」とはどれくらいの大きさのものだろうか。大鍋といえば直径が100cmもある炊き出し用や、10ℓ以上の容量の業務用寸胴鍋を思い浮かべるが、家庭に持つ者は多くはない。

 一人暮らしか、大家族暮らしか、家族構成によっても調理器具の充実は異なる。家にある鍋の中でも一番大きなものを探したところで、それは一般的には小鍋と呼ばれるサイズのものであることもあり得る。個々の「大きさの程度」の解釈などだいたいがいい加減なものなので、せめて「鍋の直径は20cm以上」とか「容量3リットル以上」とか、「おいしい」を保証するための基準値を示してほしい。

参考にならないレシピ

 もっとも、家計を切り盛りしながら家族の食事を毎日作るお母さん方と、月に一度ホームパーティーを開催する時に腕を振るう趣味人とでは料理の解釈も違うだろうし、求めるレシピも異なる。各々が生活水準やライフスタイルに合わせてネタ元を選べばいいだけの話だが、いかなるターゲット層においても、おおざっぱとしか言い様のないレシピは存在する。

 たとえば某誌のお弁当特集で掲載されていた『絶対おいしい! れんこんのきんぴら』

○材料(つくりやすい分量)

 れんこん:200g
 赤とうがらし:少量
 だし:50ml
 砂糖・酒:各小さじ1
 しょうゆ:大さじ1
 サラダ油:大さじ1

 

 「つくりやすい分量」とは何事か。れんこんが200gということは、おそらく200~250gである中サイズ一節。ならば1~2人前が妥当な線だ。はっきりと明記しない理由は、きっちり200gのれんこんを用意している人など、まず、いないので、「お手持ちの材料で、以下の調味料も含めて、参考までに目安にしてね」というフレキシブルな配慮によるものだろう。

 特に変化球のないスタンダードなレシピは、作りながら個々が勝手に足し引きして、好みの味を作ればいい。しかし、見るまでもなくスタンダードだからこそ、「何人分の量に対して、れんこんは200g、だしは50mlがベスト」と断言するプロの矜持を見せつけてほしいのだ。

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林永子

1974年、東京都新宿区生まれ。武蔵野美術大学映像学科卒業後、映像制作会社に勤務。日本のMV監督の上映展プロデュースを経て、MVライターとして独立。以降、サロンイベント『スナック永子』主宰、映像作品の上映展、執筆、ストリーミングサイトの設立等を手がける。現在はコラムニストとしても活動中。初エッセイ集『女の解体 Nagako’s self contradiction』(サイゾー)を2016年3月に上梓。

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