性のにおいがするものといえば、まずは表紙のグラビア。ハワイ出身のグラビアアイドル、アグネス・ラムさんが登場しています。日に焼けたヘルシーかつ肉感的なボディ。お腹まわりがぺったんこの平成グラドルと比べると、昭和に一世を風靡した彼女のウエストは、ちょいポチャで生活感があります。しかし、顔だけ見ればとってもベビーフェイス。あどけなさと妖しさが同居する顔で、身体はグラマラス、それでいながら、なんとなくオカン的な安定感もある……まさにオトコの好きなもの全部乗せ状態です。
そして「気になるけどなぜか凝視できなかった エマニエル夫人」特集! いまだ語り継がれる伝説の官能映画が日本で公開されたのは1974年。昭和40年男たちは9歳です。
街に貼られたポスター、そこに映し出された半裸の外国人女優、見たいのに直視できずにもじもじする少年たち……。こういう構図、いいですね。ネットを検索すれば人種、年齢を問わずあらゆる女性の裸体が一瞬にして画面に映し出される現代にはない、ドキドキ感がそこにはあります。裸を見るって、本当に一大イベントだったんですね。
それでいて、子供ながら、文学的な香りもちゃんとキャッチしている様子がうかがわれました。性が“抜く”ための材料=オカズではなく、人間模様や心理を描けるひとつの素材たりえることが、子供にもなんとなくわかっていた時代なんだという印象をうけました。もちろんいまでもそういう要素はありますが、オカズの量が膨大すぎて埋もれてしまいがちです。
バブル世代の自負
インタビューページで俳優の宮川一朗太さんが言うには、この世代の男性はいろいろあっても「何とかなる」「何とかできる」という自信があるのだとか。すごい肯定感! 彼らを含むバブル世代の人たちは自己肯定力が強いなぁと感じることは、仕事をしていてもしばしばあります。その根拠として宮川さんは、なんと、
「僕たちの若い頃って何をするにも自分で調べて行動してきたじゃない? たとえば『女性の体はどうなっているんだろう』っていう時も、ネットがないから大変な情報を集めて」
と、先述のような、いかにも少年らしいエロ体験をあげているのです。もちろんこれは一例にすぎないでしょうが、性ファンタジーの量産がすごい勢いで進みながらも、少年たちにはまだ手が届かず、リアルな裸やセックスをひたむきに求めていた時代だったんですね。セックスのリアルとファンタジーがわりといいバランス関係にあったのではないかと感じます。
いまの昭和40年男が飛び抜けてすてきなセックスライフを謳歌しているとは思いませんが、こうした時代は二度とこないでしょうから、なんだかちょっとうらやましくも感じます。いまの子ども~若者はファンタジーばかりが身近にあり、リアルな性とは距離があるのでしょう。
もちろん〈若者のセックス離れ〉はそれだけでなく、景気や個々人の経済状況、人間関係の構築の仕方などなど、いろんな原因が複雑にからみあっての結果ですが、とりあえず働く女性のせいや、グッズのせいにはするのはやめていただきたいですね。そうしたところで、なーんにも解決しませんから。
■桃子/オトナのオモチャ約150種を所有し、それらを試しては、使用感をブログにつづるとともに、グッズを使ったラブコミュニケーションの楽しさを発信中。著書『今夜、コレを試します(OL桃子のオモチャ日記)』ブックマン社。ブログ、twitter
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