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浮気者は正直か。「不貞な女」として新聞に載った母親を、娘が受け入れるまでの5年間

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『物語る私たち』公式HPより

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『物語る私たち』 サラ・ポーリー監督

 今作は、79年生まれの女優であり映画監督でもあるカナダ出身のサラ・ポーリーによる、彼女自身の家族についてのドキュメンタリー映画である。

 サラには、11歳のときに癌で亡くした女優の母ダイアンと、今でも健在の父マイケルと、ふたりの兄姉とふたりの異父兄姉がいる。彼、彼女らをカメラの前に座らせたサラは、「知ってることを全部話して」と呼びかけ、そこで語られる過去の記憶から、ポーリー家の思わぬ秘密が明らかになっていく。

生物学上の父でなくてもそこにある幸福な愛情

 皆が語るのは主に母・ダイアンのことで、インタビューには家族以外にも、彼女の生前の友人や仕事仲間たちも応えており、その人たちの話から察するに、ダイアンという女性は、本当に明るく、天真爛漫に無邪気で、周囲の人たちを惹き付ける魅力に満ちた女性だったようだ。そんな彼女に、一体どんな秘密があるのか。

 結論から言うと、サラは今まで一緒に過ごしてきた父・マイケルの子どもではなく、ダイアンが演劇の地方公演中に出会った愛人ハリーとの子どもであるという事実が曝されるのである。しかしそれは、あくまで、この映画が作られる以前に判明していたことであり、この映画はその事実を改めて「物語る」人々の姿を映している(生物学上の父ハリーも、インンタビューを受けるひとりとして登場する)。

 一見すると、家族がありながら不倫をして妊娠し、そのことを隠しながら生活していた母親、とは、ひどく不実でダメな人物のように思えるだろう。さらにダイアンは、一度目の結婚も自身の浮気が理由で離婚し、その際にはカナダで初めて親権を父親に取られた不貞な女として新聞に載った過去まであるのだ。

 しかしこの映画は、そんな彼女を責めることは一切しない。責めるどころか、自分に正直に生きた女性として、ダイアンを受け入れる(いや唯一、異母兄だけが避妊をしなかったことを責めているはいるが)。

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gojo

1979年生まれ大阪出身、立教大学社会学部社会学科卒。2005年より自身のサイト「gojo」にて映画日記を執筆、2010年には蓮實重彦、黒沢清『東京から 現代アメリカ映画談議』(青土社)の出版記念トークイベントにてインタビュアーをつとめた。「森﨑東党宣言!」(インスクリプト)に寄稿。gojogojo.comで映画日記を更新中。

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