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不思議ちゃん、メンヘラちゃん、サブカル女子、フェミニストというゾーニング

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(C)柴田英里

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 先日、「大森靖子が田嶋陽子を批判→炎上」という話題がTwitterで流れてきて、ついついその「炎上した」という音楽ナタリーの記事を読んでしまった。

 私には、大森の言葉のチョイスが下手なだけで、彼女がフェミニズムやジェンダースタディーズを批判しているようには思えなかった。

 大森靖子という歌手がいることは前々から知っていたのだけど、音楽全般にほとんど関心がないため曲を聴いたことはなかったのだが、件の記事を読んで、大森靖子の曲とパフォーマンスに興味が沸き、PVを見てみた。

 大森靖子の表現の根底には、いわゆる「女の子の規範・アイドルの規範・“かわいい”をあっという間に消費すること」への違和感と抵抗、そこからの逸脱を試みていることがあるように思った。

 ピンク色の、フリフリの、誰かに愛されるために個人の尊厳を剥奪されるような、甘くてかわいい地獄が、この世には確実にあって、若い女性は自分の意思に関わらず、その地獄に隣接した、今際の際を歩かされているような状況に立たされることが、少なからずあるように思う。「私はそんなかわいい地獄とは関係ありません」と言ってみたところで、「甘くてかわいい地獄」はなくならないし、「甘くてかわいい地獄」という存在の強化にすらなってしまう。

 大森のパフォーマンスは、ピンク色の、フリフリの、誰かに愛されるためにつくられたようなかわいい衣装とセット(甘くてかわいい地獄)の中で、「ふざけんな! そんなものは誰かにとって都合良く管理できて、飽きたら掃いて捨てる『女の子の物語』だろう」と、「甘くてかわいい地獄」の正体を糾弾する、「地獄絵図」のようなものであると思った。

 そして、彼女は、「甘くてかわいい地獄=保守的な性規範やジェンダーバイアス」にどこか違和感を持っている者たちから支持されているのではないだろうか。

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柴田英里

現代美術作家、文筆家。彫刻史において蔑ろにされてきた装飾性と、彫刻身体の攪乱と拡張をメインテーマに活動しています。Book Newsサイトにて『ケンタッキー・フランケンシュタイン博士の戦闘美少女研究室』を不定期で連載中。好きな肉は牛と馬、好きなエナジードリンクはオロナミンCとレッドブルです。現在、様々なマイノリティーの為のアートイベント「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」の映像・記録誌をつくるためにCAMPFIREにてクラウドファンディングを実施中。

@erishibata

「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」

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