高校時代に自分がゲイであることを友人にカミングアウトしはじめ、早6年。まだ一人しか男を知らなかった純情ゲイ少年が、昼ドラをすりつぶしたような恋愛を越え、今ではすっかりオンボロなオカマになりました。顔面劇場まるだしちゃんです。男か女かなんて二元論では語れない、ブスロジーを提唱する私はぴっちぴちの大学生(肌年齢は限界)。どうぞよろしくお願いいたします。
外はかなり暑くなってきて、短パン半袖男子も増え、あの健やかに伸びるアキレス腱を見て、嗚呼、強者の弱点とはなんと儚く脆く美しいのでしょう、とギリシアの英雄アキレスに思いを馳せております。(違)
先日は、別れた男のセフレになってしまう「妖怪側室ババア」を紹介しましたが、今日のブス妖怪もなかなかの強敵よ……!
それはある日の飲み会。私と私のゲイ友達数人で企画した会で、それぞれにゲイの友達を呼んで、半ば合コンのような形で開いたのね。最初は自己紹介から始まり、乾杯、談笑と、すごくいい雰囲気が続いていたのよ。
私もオカマを隠してカッコつける、いわば勝負の夜よ! 普段の友人の間でのネタ担当キャラも今日だけはお休み。もしかしたら今日お持ち帰りされちゃうかも! なんて淫らな私1号機が心の中で鼻歌を歌っています。今日はホゲない(※)!ダメ、ゼッタイ。を掲げて、飲み会という名の戦場に立っていました。
※ホゲる……オカマ口調になること。ゲイの世界ではホゲるということは、モテから遠ざかることを意味する
しかし友人のひと言が、淫らな私1号機を撃ち抜きます。
「まるだし! いつものやつやってよ!」
そう、彼は私のいつもの一発芸を期待していたの。その言葉は、シンデレラがオンボロの下女に戻る魔法の言葉。もう遅い。友人の連れてきたイケメンたちは興味津々で私に耳を傾ける。一発芸をしなければつまらないブサイクに、一発芸をすれば刹那の笑いのためにモテを捨てたブサイクに。どちらに転んでも待ち受けているのは無限地獄だわ。ああ!悲しきかな、そのつぶらな瞳で私を見ないで!
そして私はモテを捨てたブサイクを選びました。シンデレラストーリーなんてただの虚構。プリンセスの心はいつの間にやら消え果て、立派なブスンセスへ。
私にネタを振った友人は私を見ながら、いつもの調子でアヘアヘ笑っていました。満点大笑い! っつって。シャラップ!(時事)
そしてだいたいそういう人間が、「面白いネタを召還し、ネタをやる友人を引き立てた」という功績を得るの。しまいにゃ笑って満足したイケメンたちをまんまとお持ち帰りして、いいところをぜーんぶ持っていくのよ!
「妖怪クリトリババア」……
【飲み会などでネタを披露して盛り上がる女(今回はア・タ・シ!)の横で、アへ顔で「面白~い」と手を叩いている妖怪。がんばっているのはネタ女なのに、モテるのはこういったあざとい女である。名前はモンブランの栗の部分だのみを取っていく様に由来。決して恥部を表しているのではない。 「妖怪大辞典」参照】
————
恐ろしいわよ~。
友人の前ではいつもコミック担当のネタ女さんは、用心なさって。合コンに連れて行く友人は吟味しないとすぐさらし者にされるわよ。現代に蘇る魔女狩りに、ネタ女は成す術がないのよ。
女を捨てたネタ女は、ゲイや友人の間では重宝されても、イケメンたちの手からはこぼれ落ちる運命なの。この記事はそんな女たちへのレクイエムよ。身体を張るネタ女に幸あれ! クリトリババアに負けちゃだめよ!
■顔面劇場まるだしちゃん /(@toyamarudasi)爆発寸前のオカマ。北海道の僻地から湧いてでたセックスシンボル。イラストレーター、グラフィックデザイナーとして活動する傍ら、全てのセクシュアリティの人のためのブライダルLetibeeの代表として活動している。お尻が突き出ているという一身上の都合によって、高校時代のあだ名は「ケンタウロス」