あくまで私の普段の観測範囲内での話ですが、最近また「渋谷系」というキーワードを頻繁に目にするようになりました。おそらく発端は9月に刊行された『渋谷系』(シンコーミュージック)という本。音楽ジャーナリストの若杉実による本書は、関係者の声を集めながら、90年代を彩ったムーヴメントを回顧する一冊です。
正直な感想を言うと、渋谷系再評価/90年代リヴァイヴァルの流れは「21世紀に入って、もう何度目だよ」という気がして、ちょっと辟易気味です。
懐古主義的な90年代礼賛はことごとく中途半端に終結しています。例えば90年代を代表するファッション誌『Olive』(マガジンハウス)が残した種子は様々な女性ファッション誌に受け継がれ、特に昨年に創刊された『ROLa』(新潮社)は強烈に『Olive』フォロワー色の濃い「文化系女子」推しでした。しかし同誌の現時点での最新号(9月号)メイン特集は「恋よりおいしい肉がある!」。ああ、普通のライフスタイル誌に成り下がってしまっているのだなあと思ってしまいます。
【渋谷系/90年代バンザイ】主義の繰り返す勃興には、「90年代の文化にどっぷりだった編集者が偉くなって、下の世代に自分たちの好きだったものを押し付けている」という出版業界の構図が見えますね。