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男の手を借りずとも、女は自傷し自爆する…問題作『ニンフォマニアック』

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『ニンフォマニアック Vol.1&2』公式HPより

『ニンフォマニアック Vol.1&2』公式HPより

『ニンフォマニアック Vol.1&2』 ラース・ファン・トリアー監督

 タイトルを直訳すると「色情狂」だそうで、そう言われるとなんだか物々しい雰囲気になってしまうが、映画全体から受けるイメージはそんなにドロッとはしていない。子供の頃からエロいことに興味津々の女の子が、大人になってもいろんな人といろんなセックスを試してみたい、と自分に正直なビッチへと育っていく成長物語、といった感じ。

 そんなビッチヒロイン・ジョーを演じるのは、シャルロット・ゲンズブール。物語は、顔や体に酷い傷を負って道端に倒れ込んでいるジョーを、独身老人・セグリマンが自宅に連れて帰り看病を施すところから始まる。ジョーはベッドに横になり体を休めながら、自分が色情狂の成れの果てであり、なぜこんな状態になってしまったのか――を8章に分けて彼に語り始める。

セックス好きのセックス

 主人公の幼少期~20歳あたりまでを回想するVol.1は、かなり笑える。ジョーの、にわかに信じ難い過激な過去の性体験を、おじいちゃんが真剣に聞けば聞くほどギャグ。描写自体も明らかにウケを狙ってるとしか思えない。ジョーの不倫相手の妻であるユマ・サーマンが自宅に現れ、あれやこれやと騒ぎ立てるシーンなんかは、ここ数年のコメディ映画の中でも優れた爆笑シーンだろう。

 もちろん、いろんな国や映画祭で問題になっためくるめくセックスシーンは、R18も止む無しと納得の激しさだ。しかし、ただの「セックス好き」のセックスは、逆にエロくない。AVのような「ヌケる」要素や官能的エロスはほとんど感じられず、あくまでひとつの行為として、淡々と進んでいく印象(劇場にはエロ目的っぽいおじさん客もいたがそういう人たちにとってはだいぶ残念だったろう)だった。

 さて、子供の頃に無意識にオナニーの楽しさに目覚め、成長して一日に10人近い男とセックスに及ぶ日常を送るジョーの人生は、Vol.2で大きく方向転換する。それまで「愛」の存在を否定し、快楽のみを求める体だけの付き合いにしか興味のなかった彼女が、運命の人とも言えるような男性と出会い、セックスを経て、なんと不感症になってしまうのだ。

 そのことがショック過ぎたジョーは、なんとか克服しようと更にセックスを重ね、努力するが、中々うまくいかない。次第に彼女は「これは自分への罰だ」と受け止め、自らを痛めつけることで、その罪を引き受けようとし始める。つまり、今までノーマルだったセックスプレイが、自傷行為へと変化してくのだ。

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gojo

1979年生まれ大阪出身、立教大学社会学部社会学科卒。2005年より自身のサイト「gojo」にて映画日記を執筆、2010年には蓮實重彦、黒沢清『東京から 現代アメリカ映画談議』(青土社)の出版記念トークイベントにてインタビュアーをつとめた。「森﨑東党宣言!」(インスクリプト)に寄稿。gojogojo.comで映画日記を更新中。

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