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本妻、妾、第三の女。ひとりの男が蒔いた悲劇の種。映画『二重生活』

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『二重生活』公式HPより

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『二重生活』  ロウ・イエ監督

 激しい雨が打ち付ける中、いかにもバカ丸出しの陽気な若者たちがスポーツカーをぶっ飛ばし、ひとりの女性をはねてしまう、という派手なシーンから始まるこの映画。その女の素性や周囲の男女の謎が徐々に明らかになるにつれ、冒頭の事故よりもショッキングな事実が少しずつ見えてくるサスペンスミステリーだ。

 中国の武漢市で、可愛い娘と働き者の夫と暮らす主人公のルー・ジエは、一見すると何ひとつ不自由のない幸せな主婦。本人もその生活を特に疑うことはなく、子育てと家事に専念する日々を送っている。

 しかし、幼稚園で知り合ったママ友のサン・チーから、「夫に愛人がいるみたいだ」と相談を受けたことから、その夫、相手の愛人、そしてそのサン・チーを巡って、平和だったはずの日常がぼろぼろと崩れ始める。

 タイトルが既にネタバレ的な部分もあるので言ってしまうと、つまりは、主人公の夫が、実はママ友の夫でもあって(サン・チーはそのことを承知している)、ふたつの家庭を掛け持ちしながらも、よそに若い愛人を持っている。映画を見てる途中から、「これは酷いヤリチン男が巻き起こした醜聞、ってだけなんじゃないか……?」と思わなくもなかったのだが、どうやら、一人っ子政策が行き過ぎた中国では、本妻に男の子が生まれなかった場合、こういった「二重生活」を送る男はそう珍しい存在でもないらしい。事実、ロウ・イエ監督はこの脚本を、中国人の主婦がSNSに書き込んでいた悩みにヒントを得て書いたと言っている(もちろんこの手の男は少数だろうとどこの国にもいるだろうが)。

 それだけでも十分「なんちゅー国だ!」とショックは大きく、やっぱり文化の違いってのは簡単には理解できないなと改めて感じるのだが、だからと言って、「そういう国に生まれたのだから仕方がない」と、開き直れるほど女心は単純なものではない。中国女たちもそれなりにはキレる。

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gojo

1979年生まれ大阪出身、立教大学社会学部社会学科卒。2005年より自身のサイト「gojo」にて映画日記を執筆、2010年には蓮實重彦、黒沢清『東京から 現代アメリカ映画談議』(青土社)の出版記念トークイベントにてインタビュアーをつとめた。「森﨑東党宣言!」(インスクリプト)に寄稿。gojogojo.comで映画日記を更新中。

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