1月4日にスタートしたNHK大河ドラマ『花燃ゆ』だが、早くも視聴率の低迷がたびたびネットニュースにされている。2月1日放送の第5話は、平均視聴率12.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と同作ワーストを更新し、民放ドラマと比較しても良い数字とは言えないことから、NHK上層部は焦りを見せているという。
放送開始前から、主演の井上真央を取り囲む「イケメン俳優」たちを前面に押し出したPR戦略で、プロデューサー自ら、「イケメンを意識した。女性が見ていて楽しい大河ドラマにしたい。今後も実力・人気・ルックスの三拍子がそろったイケメンを続々と登場させる」と明言していた『花燃ゆ』。また、学園ドラマ要素やホームドラマ要素も盛り込み、リラックスして見られる作品にしたいとの意気込みも見せていた。だが、「イケメンが多数出演する群像劇=女性が楽しめる」という図式は果たして正解なのだろうか?
満を持して「女性にウケる大河」を送り出したハズと思い込んでいるのか、決して好調とはいえない数字に制作側は驚いている様子で、視聴率向上のために「イケメン俳優のハダカシーンを増やす」戦略が練られているとの報道も相次いだ。まさか、大河ドラマの制作現場にそこまで単純な演出をするスタッフなど実際にいないと思いたいが、「美男子が脱げば女性視聴者が食いつく」と本気で考えている層はマスコミにはいるのかもしれない。実際には、「イケメン売り」をPRすればするほど、女性視聴者が引いていくことに気付かないのだろうか?
「歴史モノを期待しているのに、『花燃ゆ』はラブコメ。裸とかラブシーンとか、そんなものを餌にしたって、大河ファンは離れていくだけだし、新しいファン層に裾野が広がることもないですよ。そもそも、『女はこういうのが好きなんだろ?』という狙いが見え透いた作品なんて、嫌悪されるに決まってるじゃないですか。放送前から、NHKの想定する“女性視聴者”はバカにされているんだな、としか思えないPR展開をしていて、見る気をなくしました。今年は『イッテQ』(日本テレビ系)を見て日曜8時をやり過ごすつもりですが、それでもやっぱり来年以降の大河には期待しています。なんだかんだいって、ストーリーの骨子がしっかりした歴史ドラマだったら大好きなので」(大河ファンの女性)
ひょっとすると我々の知らぬところで定期的に、ドラマ視聴者への大規模調査が極秘裏に行われているのかもしれないが、ドラマ界の常識では「メインターゲットは女性。女性が好むものはイケメンと恋愛」と定義されているらしい。2013年7~9月に放送され社会現象に広がる人気ぶりとなったドラマ『半沢直樹』(TBS系)の監督は、同作を「登場人物に女性が少ない。わかりやすく視聴率を取れるキャラクターもいない。恋愛もない。女性の好みそうな要素を一切入れない、ないないづくし」と表現しており、当初は多くの視聴者を獲得できるなど予想していなかったという。
しかし『半沢直樹』は老若男女問わず評判を呼び、最終話で40%を超える高視聴率作品となった。であれば、ドラマ制作側は「女性の好み“そうな”要素」とは何かについて、今一度、検証し直す必要があったと思うのだが、誰もそこをツッコまない。結果、「イケメン」「ラブ」「ちょいエロ」な薄っぺらい作品が量産され続けることは、ドラマ界にとっても、ドラマファンにとっても悲劇でしかない。NHK大河も、せめて『花燃ゆ』の企画段階で、同枠に期待するファンたちの声や、「女性視聴者」が歴史ドラマに求めるポイントをリサーチしていれば、また違っていたかもしれないのに……。
(清水美早紀)