『四季・奈津子』同様、今聞いても斬新な曲『港のヨーコヨコハマヨコスカ』が大ヒット。夫、宇崎竜童氏とのコンビで作詞家として世を席巻した阿木様は、これまた数々の名曲を残された山口百恵様(皆、偉大なので、皆、様付け)の『横須賀ストーリー』でレコード大賞作詞家賞を受賞し、さらにS.54年に『魅せられて』、S.61年に『DESIRE―情熱-』で大賞を受賞するという快挙。その後も、次々とヒット曲を世に出し、S.55年には『四季・奈津子』で報知映画賞最優秀助演女優賞を受賞。映画『TANNKA』では、映画監督を。料理上手としても知られ、料理本を出版し、その撮影時には、5時間で17品をさくさく? 作る凄技ぶり。
魔性の女として大バッシングを浴びた裕木奈江嬢の、元祖不倫主演ドラマ『ポケベルが鳴らなくて』では裕木奈江嬢と不倫に溺れる緒形拳氏の糟糠の妻を熱演し、フラメンコまで披露。そのフラメンコを題材にした『FLAMENCO曽根崎心中』という舞台のプロデュースでも好評を博し、2006年には紫綬褒章を受章するという、さらなる快挙をも成し遂げ、もう、受賞、受賞、快挙、美人、才媛、料理上手、受賞、快挙、フラメンコ、快挙、快挙の連続で、おまけに裸も美しい。才色兼備の生きる見本です。
阿木様の自己評価
「お若く見えますね」「何歳に見える?」「〇〇歳よ」「嘘でしょ~」という会話を、結構頻繁に耳にしますが、私の周りだけでしょうか? それともNoと言えない日本人のだめな癖。誉め合い癖? 一見高級風なレストランのランチタイムの席で、時々“ザ・誉め合いグループ”に遭遇しますが、チラ見すると、シャチハタを思わせる同じような化粧、ストール、指先。言い合ってて面倒くさくはないのでしょうか? 主婦間、OL間の政治か何か? 遠目には皆同じように見えるのだから、5つ子とかに。安い会話に費やさなくても。お得なランチタイムに合わせての安さ? なのか何なのか。新宿ゴールデン街でくだを巻きながら飲んでいるOLのほうが、眼鏡美人とか色白巨乳とかが多い気がします。しかし誰も誉め合わず、こちらはこちらで必要以上にけなし合ってます。どちらもイエローカードかもしれませんが、後者のほうが、自分たちを過小評価してるので基礎力は上がる気もします。
もしそんな、2グループのもとに現在69歳の阿木さんが登場したらどうなるか? 自分の年を口にしたらどうなるか? それでも女たちはお互いを誉め合うことができるのか。百恵ちゃんの数々のヒット曲もさることながら、『キッスは目にして』、『想い出がいっぱい』、『はがゆい唇』、『カリフォルニアコネクション』、『微笑がえし』、まだまだいっぱい、あれもこれも全部阿木さん。偉大すぎて、何も言えない。あっ、百恵ちゃんと阿木さんと、あとアンルイスさんとかもいるグループだったら誉め合ってても納得できます。
「自分らしく」の成功例を体現している阿木燿子さんから学ぶことは、意外に自分に対しての冷静な目かもしれません。妖艶であんなに美しいのに、毎日料理も作り、さらに作詞する時の姿は、修験僧のようだとテレビで夫の宇崎さんがおっしゃっていました。レベル高く生まれたことに驕らず、努力し続ける姿。
40代にもなってしまうと、もう「自分は自分」と半ば開き直るしかないのかもしれませんが、20代、30代前半の読者の方は、阿木さんの生き方に触れてみるといいかもしれません。そして、中年以降の方は、五木先生の健康法・養生法が書かれた本を是非! しかし、小説にしても映画にしても『四季・奈津子』は名作。ちなみに阿木様は渡辺淳一先生の『化身』でもヌードを披露しておられます。大作家先生たちに愛されている証拠でしょうか。
■阿久真子/脚本家。2013年「八月の青」で、SOD大賞脚本家賞受賞。他に「Black coffee」「よしもと商店街」など。好きな漢は土方歳三。休日の殆どを新撰組関連に費やしている。
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