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歌舞伎町である必然性も、前田敦子の濡れ場もない、なんにもない映画『さよなら歌舞伎町』

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『さよなら歌舞伎町』公式HPより

『さよなら歌舞伎町』公式HPより

『さよなら歌舞伎町』   廣木隆一監督

 新宿歌舞伎町のラブホテルが舞台の映画に、前田敦子が主演、と聞いて、少なからず「お!?」と思うのは、やっぱり、その場所のイメージと日本のトップアイドルとの組み合わせが意外だからだろう。

 新宿歌舞伎町といえば、日本一の歓楽街。見るからにいかがわしい風俗店がところ狭しと建ち並び、ラブホテル街へとつながる一帯は、世界的に見ても、特殊だ。そして、そこで働いたり遊んだりする人々も、何やらワケありの人が多そうで、危険なイメージ。

 そんな世界にあの前田あっちゃんが、となると、「まさかの濡れ場!?」的な下世話スケべ心と同時に、「さよなら」と銘打つということは、主に男の遊び場である歌舞伎町(いくらホストクラブが増えたとはいえ、やはり男性を対象にしたお店が圧倒的に多いのが現状だろう)を、いい加減にしろと見限って去る流れなのかしらと、個人的にはあっちゃんの啖呵に期待したりしたのだが、実際本編を見てみると、そのどちらでもなく……。

<以下、映画のネタバレを含みます>

「さよなら」の意味

 歌舞伎町にあるとあるラブホテルのとある一日、様々な理由でそこを利用する人たちの悲喜こもごもが描かれる。一応メインとなるのは、店長として働く染谷将太とプロのミュージシャンを夢見る前田敦子のカップルだが、それ以外にも、不倫カップルや、時効間近の犯罪者を匿うバイトの女や、AVの撮影隊など、それこそワケありの人間たちが入れ替わり立ち替わり現れては、それなりにドラマを落としていく。

 が、そのドラマというのが、別に歌舞伎町じゃなくても、地方のラブホテルに行けばどこにでも転がってそうなほど、どこかで聞いた様な話の連続で、逆に、歌舞伎町って意外とフツーの場所だったんだ、と思えてくる呑気さで拍子抜けする。親に愛されなかったトラウマを抱えた家出少女、震災で被害にあったことがきっかけでAV出演をはじめた女、家族がいるのにリストラされかけで自暴自棄な男。むしろAVに出演することにそんな仰々しい理由が必要か? 現実には、女が身ひとつでラブホテルに男と入るとき、そこが、暴力を振るわれるだけでなく病気や妊娠など、どれだけの具体的な危険が起こり得る場所となるのか、もうちょっと考えて欲しい(まさかそれは自己責任とでも言うのか……)。

 要するに、描かれているのはかなりファンタジー要素の濃い「人間ドラマ」。その最たるものは、故郷での成功を夢見て、同郷の彼氏に嘘をつきデリヘル嬢をしている韓国人の女・ヘナの存在だろう。

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