他方、『はじめての男の婚活マニュアル』(男の婚活研究会/秀和システム)には、結婚へのネガティブイメージ(自分の時間がなくなる、自由に使える金が減る、いつまでもラブラブなわけがない等)も描かれているし、譲れない条件について「美人・若い・可愛い女性ならば、散財癖があって専業主婦でも家事ノータッチでもOKなのか」問うたり、男はバッグを持ち歩かず手ブラがベストとか、足組みは悪印象とか、「あー確かに」と頷ける点が多く、良き“べからず集”と言えるかもしれない。入ったお店で店員の態度が悪かった場合に「こら、客を舐めてんのか!」と憤るような態度について、『男が思っている以上に女性はこれを良しとしていません』という記述があり、「えっ、大半の男はこれを良しとしているものなの……?」とびっくりさせられもした。全項目イラストつきかつ短文構成で読みやすいので、女性とどう付き合っていいかまだよくわからない大学デビュー男子など若者にもおすすめできる内容だと言えそう。
「寂しい」を解消できる結婚・できない結婚
結婚相談所所長・西田氏は女性は結婚相手探しに際して、本能的に「自分の人生をこの男に預けて良いか?」と言う視点で男の中身を見ていると言う。だから婚活男性は、本気のデートをし、本気のプロポーズをして本気で婚活すべき……でもでもだってで申し訳ないが、結婚前にそんなふうに本気を出してくれていた男性が、結婚したら「普通」になってしまい、本気の出し惜しみをするようになってしまったら。というか、常に本気でなんて取りかかれないのが夫婦生活ではないだろうか。だからこそ、やっぱり、成婚前の自己演出はほどほどにしておいてほしい、と思う。
これは男女性別を逆にしたって同じことで、たとえば女性向けの婚活・恋愛マニュアルで提唱された清楚メイクを、夫婦生活において妻が24時間落とさずにいられるものでもない。また、「男は詮索されたくないもの。カレが不機嫌な時は何も聞かないでそっとしておいてあげて」とアドバイスする項目があったとして、それを恋人期間は実践していた女性も、結婚してからもずっと「本当は夫が何を考えているのか知りたいのに聞けない」とモヤモヤしながらその状態を続けていたら、ストレスでおかしくなるかもしれない。
結婚はゴールではなく、それから先の何十年続く生活の始まりなのだから、無理して好かれた相手と入籍してしんどくなるのは自分自身。男性が結婚を意識する時ナンバーワンは「寂しい時」なわけだが、「寂しいから」を理由に始めた婚活の結果、成婚したからといって急に寂しくなくなるかといえばそれも違う。家族がいれば寂しくない、なんてまやかしだ。家族がいるのに理解し合えず孤独を感じることもある。
目の前にあるものが、「愛した人に愛される」という見返りを手中にできる結婚なのかどうか……見極めは困難だが、ともかく男性も「結婚する」と決めたのなら、助走にあたるお付き合い段階で見栄を張らず、結婚後こそ本気で相手と向き合う覚悟で挑むべきなのだろうと思わされた。
(下戸山うさこ)