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大人の官能映画ではなく、夢見る少女向けのちょいエロ王子『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』

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『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』公式HPより

『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』公式HPより

『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』サム・テイラー=ジョンソン監督

 「全世界の女性を虜にした、累計1億部突破の大ベストセラー官能小説ついに映画化、100分中20分が性行為シーン!」という宣伝文句につい惹かれ、女ひとりで見に行ってみました。

 特に美人でもなく、地味で冴えない女子大生・アナ。風邪を引いたルームメイトの代わりに、若くして成功したと話題のイケメンIT社長・クリスチャン・グレイにインタビューするため、彼の超豪華なオフィスを訪れる。身分も生活もまったく違う、なのになぜだか惹かれ合うふたり……。

 この設定を説明する冒頭数分だけで、グレイの目の前ですっ転ぶアナ、インタビューなのに筆記用具を忘れてきちゃうアナ、と、ヒロインのドジっ娘ぶりが見せつけられる。そこで「なるほど、これは官能小説じゃなくて少女漫画なのか」と頭を切り替えて鑑賞することにした。すると、この作品が、今どきの世界中の女の子のハートを掴んだとされる理由が、なんとなくわかった。

少女漫画の魅力って万国共通なのかも

 グレイの魅力を感じながらも、恋に超奥手のアナは、自分から彼に近づくようなアクションを起こせない。それでも、謎めいた行動でアナの前にちょくちょく姿を現すグレイ。彼の真意がよくわからないまま、それでも距離を縮めることに成功したように見えたふたりだが、彼は「俺は人を愛すことができない……」と、彼女を遠ざけようとする。彼の言葉の本当の意味とは……。

 その意味は、この男が「SM嗜好が強いので普通のセックスじゃ満足できない」、ってだけのことだった。しかもグレイの言う「普通じゃない」プレイも、その「プレイルーム」を見る限り、さほどハードなSMって感じでもなく、あくまで観客が引かない程度のマイルドさ。それでも、恋愛経験ゼロで処女のアナにとっては大事件であり、彼の提示する「契約」を受け入れるかどうかで揺れまくる乙女心。その「契約」ってのは、SMプレイに関する細かい事柄をお互い承認しあうものなのだが、アナが「アナルはいやだ」と言うとあっさり受け入れられる程度のもので、グレイって別にサディストでもないんじゃないの?

 その契約には、いわゆる「普通」の恋愛に興味のないグレイは、「一般的な恋人同士のようにデートをしたり一緒に眠ったりすること」をしたくないので、アナがそれらの行為をグレイに求めない――という項目も含まれている。が、グレイってば全然、冷血じゃないのだ。仕事を放ってでもアナのいる場所に神出鬼没に現れたり、パソコンや高級車をプレゼントしてくれたり、サプライズなデートをセッティングしてくれたりと、その辺の男より全然優しい。夢見る夢子ちゃんなアナにとっては理想の恋人なんじゃないのと、ぼろぼろ矛盾がありまくりだ。

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gojo

1979年生まれ大阪出身、立教大学社会学部社会学科卒。2005年より自身のサイト「gojo」にて映画日記を執筆、2010年には蓮實重彦、黒沢清『東京から 現代アメリカ映画談議』(青土社)の出版記念トークイベントにてインタビュアーをつとめた。「森﨑東党宣言!」(インスクリプト)に寄稿。gojogojo.comで映画日記を更新中。

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