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元アゲ嬢の現役キャバ嬢社長が持つマインドは「フェミニズム」そのものである

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(C)柴田英里

(C)柴田英里

 元『小悪魔ageha』モデルであり、現役のキャバ嬢であり、インターネット販売だけで月商1億5000万円を売り上げるというアパレルブランド『Emiria Wiz』の社長を勤める愛沢えみり(26)という女性がいます。

 彼女の自伝、『キャバ嬢社長—歌舞伎町No.1嬢王愛沢えみりとしての生き方』(主婦の友社)が2月19日にリリースされたので早速読みました。この本は26日時点でAmazon和書の「恋愛論」カテゴリのベストセラー1位になっているのですが(個人的には「恋愛論」ではないと思うのですが)、読後、まず最初に思ったことは、「これは非常に素晴らしいフェミニズム本である」ということです。

弱さを認め、強さを身につける過程

 自伝の内容を大雑把に説明すると、やる気も夢もなかった横浜のギャルが、六本木のダメキャバ嬢になり、経済的・精神的に依存していた恋人との破局によって住居などのライフラインを失ったことを経て、歌舞伎町のNo.1キャバ嬢になり、キャバ嬢を続けながら月商1億5000万円のアパレル会社社長になる。という、清々しいほど「The成り上がり」というか、「成り上がり」の部分にばかり注目されてしまいそうな話なのですが、『キャバ嬢社長』が素晴らしいのは、「自信を持つこと」と、「地道にコツコツ努力すること」の重要性が、実直かつ真摯に語られていることです。

 たとえば、2年ほど交際しどっぷり依存していた同棲相手の彼氏と別れ、住む場所も生活費も何もかもなくなった、というくだり。

“一気に豪華な家も、素敵な生活もなくなった。彼に買ってもらったものも全部要らない、といって突っ返したから、本当に何も残らなかった”

“どうにかしなきゃって、生まれて初めて真剣に考えて、毎日のように泣いて、別れたショックと今後の不安でどうしようかと思っていた時に、ふと気が付いた。えみりがこうなったのは、「生活のすべてを、いつも人に頼っていたから」だって事に。両親、友達、先生、そして彼。いつも誰かが助けてくれる。だからその人がいなくなったら自分には何も残らない。もうこんな思いは嫌。自分で自分に何かを残せるようになれば、こんなに辛くはない。誰かがそばにいなくても大丈夫な人になりたい、人に頼らない強い女性になりたいと思った。”

 なんというフェミニズムな文章なのでしょう。こんなに簡潔に、わかりやすくフェミニズム思想の一つの根幹が示されている文章はなかなかありません。この部分を読んだ時、感動して思わず泣いてしまいました。フェミニズムの流派や解釈は多様にありますが、私は、大雑把に言えば、「男ではないこと、又は女であることによって、不利益を被ったり、惨めな気持ちになることなく、自尊心を持つための思想」であると思っています。

 若い女性の中に“隠れ専業主婦願望”が広がっていると言われている今だからこそ、愛沢えみりの「誰かがそばにいなくても大丈夫な人になりたい」という主張は重要です。

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柴田英里

現代美術作家、文筆家。彫刻史において蔑ろにされてきた装飾性と、彫刻身体の攪乱と拡張をメインテーマに活動しています。Book Newsサイトにて『ケンタッキー・フランケンシュタイン博士の戦闘美少女研究室』を不定期で連載中。好きな肉は牛と馬、好きなエナジードリンクはオロナミンCとレッドブルです。現在、様々なマイノリティーの為のアートイベント「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」の映像・記録誌をつくるためにCAMPFIREにてクラウドファンディングを実施中。

@erishibata

「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」

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