三誌三様の特色
近く3カ月分の付録を並べてみただけですが、付録の感じと本誌に掲載されている漫画との親和性も見えてきます。
バレンタインのお菓子作りセットや、男子生徒などにからかわれることへの配慮で考案されたであろうファッション雑貨など、3誌の中で一番「男女二元論に基づいて第二次性徴を迎える女子と男子の関係性」を考えて付録を作っていると思われるのは『りぼん』。同誌は漫画も一番「リア充異性愛学生の恋愛物語」が多く、変身ヒロインや魔法・超能力・異世界といったファンタジー要素を持つ作品は少ないです。以前は、看板作家種村有菜がそれらの要素をすべて詰め込んだ学園恋愛物語を多く発表していたのですが、ありなっち遺伝子は最近のりぼんにはあまり残っていないのかもしれません。
学校に持って行ける最大限の玩具文具が中心の『なかよし』は、ファンタジー色の強い作品が多く、サバゲーをする女子高生たちを描いたドタバタコメディ『さばげぶっ!』や、ホラー・シリアス・バイオレンスの三拍子が揃った『出口ゼロ』、男性キャラクター同士がキスをするBL要素もある『着ぐるみガーディアンズ』など、「1対1の異性愛」に回収されない要素の強い作品も多いです。
3誌の中で圧倒的付録量かつ企業タイアップ付録の多い『ちゃお』は、『アイカツ!』『プリパラ』『妖怪ウォッチ』と、現在女児の親たちが最も関連商品を買わされているであろうアニメ・ゲームのコミカライズ版が掲載されています。毎号、女子小学生向けファッションブランドとタイアップした服がふんだんに出てくる『探偵ミーミのおしゃれ事件簿』など、付録同様物欲に特化した漫画が多いです。また、眼球肥大や独創的なヘアスタイルがネット民に注目された『いじめ』や『姫ギャルパラダイス』といった、身体の一部が誇張され物質的に身体から独立してしまうような表現を持つ作品が掲載されていたことも物欲の過剰さと関連しているかもしれません。
3誌をそれぞれ一言で表すと、
りぼん「楽しい学生異性恋愛」
なかよし「好きに生きろ」
ちゃお「消費することは素晴らしい」
といった印象を受けました。
関係ない話ですが、自分が小学生のころの少女漫画誌には必ずといって良いほど裏表紙に載っていた『日ペンの美子ちゃん』の漫画がどの雑誌にも見当たらず、年月を感じました。気になり調べてみたら、『日ペンの美子ちゃん』は1999年まで誌面に掲載されていたようです。
■ 柴田英里(しばた・えり)/ 現代美術作家、文筆家。彫刻史において蔑ろにされてきた装飾性と、彫刻身体の攪乱と拡張をメインテーマに活動しています。Book Newsサイトにて『ケンタッキー・フランケンシュタイン博士の戦闘美少女研究室』を不定期で連載中。好きな肉は牛と馬、好きなエナジードリンクはオロナミンCとレッドブルです。Twitterアカウント@erishibata
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