夜逃げ準備から実行まで
当時、私は彼とワンルームマンションで同棲していました。
物件探し、荷物の整理、お金の用意や、法律のこと。彼と生活を共にしたまま、すべての準備を秘密裏に進める必要があったのです。
夜逃げを決意してから実行するまでの約3カ月間、彼にバレるのではないかと思うと、生きた心地がしませんでした。
引越し当日、友人の車に必要最低限の荷物を運びこみ、私は彼と6年間生活を共にしたアパートを去りました。
開放感と、無事に夜逃げを達成できた安堵感で、妙にはしゃいでいたことを覚えています。
「大丈夫? 無理することないよ」
私の空元気を見抜いたのでしょう。友人は心配そうに言いました。
「うん、ありがとう。……私、彼のことが本当に好きだったんだなぁって。好きだから我慢して、耐えてしまった。
私は彼を大切に思っていたけど、彼はそうじゃなかったって、初めてわかったの」
好きな人から、大切にされたい――。その小さな願いを、彼が叶えてくれることは、これまでも、これからも永遠にない。
そう思うと、涙が止まりませんでした。
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内閣府男女共同参画局 全国共通DV相談ナビダイアル0570-0-55210
■長南はる香/性暴力サバイバー、現代美術アーティスト、写真家。高校生の頃から、約10年にわたって性的虐待、DVを受ける。その後、セックス依存症に。トラウマを乗り越えた経験を元に、「女性のためのエロティックアート」を制作している。HP『現代美術アーティスト「はる香」の描くアダルト映像の世界』
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