インタビュー

夫が100万人に1人のガンに罹ったら? 家族が患者にできること

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 『小学生男子(ダンスィ)のトリセツ』(扶桑社)など、コミカルなどたばた育児漫画を描かれてきたまきりえこさんが『夫が骨肉腫になりました』(扶桑社)を今年2月に出版されました。

 この漫画は、タイトルどおり、夫の「クロとら」さんが、骨肉腫になってしまったお話を描かれています。闘病記のようでもあり、家族モノの漫画のようでもある、まきりえこさんらしい漫画です。

 骨肉腫とは、骨にできるガンのことで、特に膝や肩周辺にできやすいといわれています。10代20代と若い人がかかりやすく、100万人に1、2人がかかる希少なガンです。現在は治療法が確立されており、5年生存率は70%程度(国立がん研究センター)。

 インタビュアーもまた、「骨肉腫」の経験者です。誰もがパートナーや自分が、突然、病気に罹るリスクを持って生きています。他人事だと思っていた病気が自分事になったとき、いったいなにができるのか、まきさんにお話を伺いました。

病気で滅入るのは患者だけじゃない

―― 冒頭から私事で恐縮なのですが、実は僕自身が骨肉腫で2年弱入院していたこともあり、「あるある!」と思いながら漫画を読んでいました。まずクロとらさんが病院に行く前の「なんか足が痛い」というお話。この「なんか」がとてもよくわかるんですよね。最初は本当に微妙な痛みなんです。当時、クロとらさんからその話をされて、どんなお気持ちでしたか?

まき 当時小学校6年生の息子が急性腎炎で1カ月ほど入院していました。病状は改善せず、命の危険もあって、私は病院に泊り込んで息子の看病をしているのに、そんなときにかまってちゃんのように「足が痛い」と言い出す夫。泊まりがけの看病に忙しくて夫への目配りが行き届かなかったこともありますが、私は一緒に子供の看病に気持ちを向けてくれない夫への不満で、夫の発信する病気のサインを見逃してしまったんです。

―― 医師ではないので一般化できませんが、本人ですら「成長痛かな?」と思うような痛みなので、ご家族が気づけないのは仕方ないと思います。その後、クロとらさんは「骨巨細胞腫(こつきょさいぼうしゅ)」という良性腫瘍と診断されていたのが、手術中に悪性腫瘍だと判明する。やはり混乱されたのではないでしょうか?

まき そうですね。骨巨細胞腫を取り除く手術中、家族は別室待機だったのですが、いきなり手術室に呼ばれて「患部を開いてみたところ悪性のようです。手術中止の承諾書にサインをください」と言われたんです。良性と聞いていたので、目の前が真っ暗になりました。

夫への告知は「術後一週間の病理検査を待って」ということでしたが、麻酔から覚め、手術時間が短かったことを訝しがる夫に、一週間も隠し通す自信がなく、悪性腫瘍の可能性があることを医師に告げてもらいました。夫はかなり動揺していましたね。でもまだ「確定」ではなかったので、検査結果が出るまでの一週間は日頃不信心な夫が「違ってますように!」など神様だかに祈り続けていました。

―― そして一週間後、あらためてやはり「骨肉腫」だったと告げられる。

まき 夫は「骨肉腫」と聞いてさらに動揺したみたいです。「悪性腫瘍とは思っていたけど、骨肉腫なんて!」って。私は夫よりも先に聞いて、動揺から立ち直っておいてよかったと思いました。夫婦で右往左往したらどうにもなりませんから。

―― 僕は井上雄彦さんの『リアル』(集英社)という漫画に、骨肉腫で足を切断した登場人物がいたので「あの病気かー」と思いました。ちなみに、クロとらさん同様、足に多少の障害が残りましたが切断はしていません。おふたりにとって「骨肉腫」という病名は相当なインパクトがあったんですね。

まき ええ、ちょっと前はドラマや映画では骨肉腫って怖い病気の代名詞として使われていたんですよ。私も夫もそういうドラマを見て育ってきたので…

―― 調べてみたところ、映画『翼は心につけて』(1978年公開)、ドラマ『わが子よ』(TBS)などで骨肉腫が描かれていました。

まき 骨肉腫は若い人が発症することの多い悪性腫瘍なので、若くて健康だった登場人物が悲劇的に亡くなる病名として、ドラマや映画に使いやすかったんだと思います。昔は足など腫瘍のある箇所を切断する治療法で、またその甲斐もなく再発をして亡くなられる方も多かったようです。

医師には、「いまは治療法も確立されて、生存率も大幅に上がっている」と説明されました。ただやっぱり「骨肉腫」という病名は恐ろしかったですね……。

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