子宮の機能や基礎体温、自律神経の話などごくノーマルな情報も掲載されているものの、〈子宮は感情の臓器〉という、スピリチュアル界の大好物な概念が度々はさみこまれます。
・子宮はネガティブな感情をためやすい臓器なので〈泣いて〉浄化する。(巷で話題の「涙活」とおまた活動家たちが、タッグを組む日も近いか!?)
・男に生まれてほしかったという両親からのプレッシャーを受けていた女性が、婦人科系のトラブルとなり、子宮を摘出する事態を引き起こしたという事例の紹介(理由は後づけな気がします)。
・クリエイティブな生き方をしていれば、子宮は喜ぶ!(同書におけるクリエイティブの定義がちょっと分からなかったりしますが)
・映画を通じてハートウォーミングな体験をすると、子宮は喜びにあふれる。ハグをすると子宮に愛があふれてぽかぽかになっていく。(えーと、ページ埋めるために書いていません?)
さらに〈第6感を生かして子宮の声を聴くレッスン法〉も紹介されており、子宮、完全に擬人化。ただの健康本だと思って手にとった人はさぞかし驚くことでしょう。messyでおなじみのしQちゃんが、帯に登場してもおかしくない勢いです。子宮がぽかぽかに温まると、整理整頓ができるようになり無駄な買い物も減り、笑顔が増えるそうですが、しQちゃん、いかがでしょう。
子宮は宇宙とつながっている
メインテーマである〈ぽかぽか子宮の作り方〉も、すごい前提によって語られています。〈子宮は体の奥にあるので直接温めることが難しい〉という導入から(ほかの臓器も同じだと思うんですけど)、〈体の表面だけ温かくて、内側にある子宮だけ温まっていない女性も多い〉といいます。著者は助産師ですが、本気で言っているのでしょうか。骨盤の中にある子宮や卵巣は体内でも体温が安定していたところにあり、手足やお腹が冷えたくらいでは骨盤内の温度は下がらないといいます(参照:『女のカラダ、悩みの9割は眉唾』(講談社α文庫・宋美玄著)。もし本当に内側がそこまで冷えていたら、冷えを通り越し死に至るレベルの低体温症。
あとがきでは前出の池川医師が寄稿していますが、ここでまさかの人物を紹介していました。“ジェムリンガマスター”として名を馳せる、子宮委員長・はる氏です。彼女の「子宮を通して宇宙とつながっている」「赤ちゃんは子宮の中で、母親だけでなく、その母親、またその母親というように先祖の感情が幾重にも子宮の周りに殻になっていて、その影響を受けて育っていく」というスピトークを引用しながら、心の持ちようで子宮に影響を与えるという考え方を肯定しています。
でもその前に一応監修者として、人体のしくみ的におかしいような記述はチェックしていただきたいところ。子宮が女性の幸せの源! と持ち上げつつ、あらゆる不調は〈冷えた子宮〉のせいにされる、困った本だなという印象です。
以上2冊、異界からのお便りとして、楽しく拝読させていただきました。
(謎物件ウォッチャー・山田ノジル)