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家事労働の再分配問題。夫はどうして家事をやらなくなってしまうのか?

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妻は夫の教育者なのか?

 で、こういうシーンで妻が「夫を教育しろ」、「夫は褒めて伸ばせ」みたいなことが良く言われています。夫は妻の子供でもないのに、そういう風になってしまうのは、なかなか複雑な気持ちなんですが、個人的にはよく分かる話です。なぜなら私自身、かなり妻によって家事を教育されてきたと思うから。実家にいたときは何一つ家事をやらずに過ごし、大学入学とともに上京して自己流で身につけてきたアレコレには非効率的な部分がたくさんあり、結婚して間もなく5年になりますが、妻から教わったことが沢山あります。

 家庭って共同生活の場だし、誰かが一方的に我慢するのはフェアじゃない。共同生活者から指摘されること・教わることは、自分には気にならなくても相手にとっては気になることだから指摘されているわけです。自分が気にならない事柄だということは、自分にとってはこだわりがないことなんだから、相手に合わせよう。そういう気持ちでやってきました。

 考えてみると、妻の同僚の女性たちは、私を褒めるよりも、そういう風に教えてくれた妻の方を教育者として讃えるべきなのでしょう。逆に結婚するまでは自分で家事をやっていた夫が、結婚したらちっともやらなくなってしまった、という家庭においては、妻が教育に失敗している、と言えるのかもしれません。でも「教育」と言っても、学校教育のような体系化されたものではなくて、この場合は「言い方」なんでしょうね。「妻から夫への家事ハラ」という話題においては、夫が家事をしたくなくなる理由のひとつに、妻の夫への要求・指摘の仕方がやや強すぎることがあげられます。

 「タオルを裏返しで畳むなんてありえない!」こんな言い方をされたら私も傷ついたと思います。タオルには裏と表があり、それを正確に見分けた畳み方をすべきであるということを妻は私に説明してくれました。私は「そんなのどーでもいいじゃん」と流さず、「そうなのか。じゃあ今度からそうやって畳もう」と受け止めました。それだけのことなんです。でも、夫が家事をしなくなる家庭における、妻の夫への要求・指摘ってこのぐらいのヒートアップしたレベルに達している傾向がありそう。

 夫婦のすれ違いに関しては、往々にして「夏がダメだったり、セロリが好きだったりするよね」……なセロリ問題として語られますけども、育ってきた家庭環境が違うんですから家事のやり方だって各々異なるんですよ。タオルの裏表を知らなかった男性もいるわけです。タオルの裏表を意識して20何年生活してきた妻にとっては衝撃だったかもしれませんが、でもそれを頭ごなしに「知らないなんておかしいんじゃないの!?」と詰め寄ったりせず、「そうか、この人はタオルの裏表がない国に生まれたんだ……」ぐらいに思ってもらえたからそんな些末なことで喧嘩しなくて済んでいる。

 ご家庭によっては、「タオルは毎日必ず洗濯する」派、「タオルは3日間使ってから洗濯する」派、「タオルは干さずに乾燥機にかける」派、などなど様々だと思うんですね。ですから、結婚して新しく家庭を築くことになったら、まずお互いがどんな環境で育ってきたかの確認と擦りあわせをすると、その後の「価値観相違による衝突」を少しは避けられるように思います。そうは言っても、「家事は全部、女がやるものだと信じて疑わない国(ご家庭)で育った人」と、「家事労働は家族全員で分担して快適な生活環境を維持するのが普通だと考えている人」とでは、うまく擦りあわせることが難しいかもしれませんが……。

■カエターノ・武野・コインブラ/80年代生まれ。福島県出身のライター。Twitter:@CaetanoTCoimbra

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カエターノ・武野・コインブラ

80年代生まれ。福島県出身のライター。

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