「優等生」からの逸脱を畏れる現代
復刊号は、女の子たちの「かわいくなりたい」という気持ちを後押しする“コンプレックス解消ブック”をコンセプトに掲げ、「私たちの『かわいくなりたい』欲は変わりません」「ジャンル別ヘアアレンジ」「アイメイク」「初めての男から現在の彼まで振り返ってみました」「美容メンテ」などの特集で、表紙は看板モデル桜井莉奈が大粒の涙をつけた『「病み・闇」推し』の印象を受けました。
事実、「初めての男から現在の彼まで振り返ってみました」という企画では、往年のagehaの「病み・闇」企画同様にダメンズ遍歴やDV被害が多く語られたり、「恋人と別れた理由」に「警察にパクられた」「鑑別に送られた」という若気の至りというにはいささかヤンチャすぎる理由が複数のモデルたちから語られるなど、相変わらず『小悪魔ageha』らしい内容でした。
こうしたヤンチャさは、鈴木奈々や藤田ニコルといった近年のギャル系モデル・タレントが、「おバカ」「恋人への一途さ」という要素の強調や、規律に対する優等生性を兼ね備えて台頭している現在の状況の中で、やはり貴重であると思います。
『小悪魔ageha 』と直接関係はありませんが、最近世間では、6歳の息子にホストのような格好をさせている「ちいめろ」を叩くような声が多く出現しています。ホストのような格好の6歳の息子が母親に無理矢理そうした装いを強制されているなら問題ですが、息子本人が楽しんでいるのか無理矢理強要されているのかわからない中で、ちいめろを「母親失格」と叩くことは、なんとも不寛容だなあと思いますし、自分たちが正しいと思う文化だけが正しい文化ではないことを、もっと考えるべきだと思います。
「子供に逸脱した格好をさせるといじめられる」という意見もあるようですが、そんなのは100%「いじめる側が悪い」問題ですし、「人と違う格好をすればいじめられる」と吹聴することは、親の側から子供に「差異に不寛容であれ」と説くことに近いものがあるように思います。
仲間内の同調圧力や「正しさ」や「規範を守る優等生さ」ばかり強いられる世の中って、とても息苦しいと思いますし、それによって均質化されてしまう世の中って、とても味気ないように思います。
なにより、相互監視し合い、空気が読めなかったり逸脱した者がいたら一斉に叩く、みたいな文化はとても怖いです。
『小悪魔ageha 』に対しては、中條元編集長の指摘と同様に、「今後どう差別化をはかり、私たち読者を楽しませていただけるのか、期待しています!!」という気持ちで溢れています。一読者として楽しみにしています。
■ 柴田英里(しばた・えり)/ 現代美術作家、文筆家。彫刻史において蔑ろにされてきた装飾性と、彫刻身体の攪乱と拡張をメインテーマに活動しています。Book Newsサイトにて『ケンタッキー・フランケンシュタイン博士の戦闘美少女研究室』を不定期で連載中。好きな肉は牛と馬、好きなエナジードリンクはオロナミンCとレッドブルです。Twitterアカウント@erishibata
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