連載

チカン抑止シールと、男の罪を憎めない男たち

【この記事のキーワード】
Photo by 古 天熱 from Flickr

Photo by 古 天熱 from Flickr

 埼玉県警が考案した「チカン抑止シール」がネット上で話題になっています。このシール、県の鉄道警察隊の女性隊員が中心となって開発したと謳われていて、警察も女性目線でいろいろやってますよ、的なアピールがなされておりますが、なかなか突っ込みどころがあるアイテムでした。

 シールにはあまり可愛くない女性警察官のコスプレをしたハト(メス)キャラクターが描かれていて「さわらないで!」とメッセージを伝えています。満員電車で痴漢被害にあっても「怖くて『やめて』と伝えられない」という女性は、このシールをケータイなどに貼っておけば、被害にあった際にシールを見せて警告できますよ、というのが一つ目の使用法なんだそうです。

そのシール、効果ありますか……?

 この使用法、えー……、って思いますよね。「さわらないで!」というハトキャラ(今調べたところによれば、ポポ美ちゃんという名前がついていた)を見せたぐらいで、加害者が痴漢行為をやめるか、っていう。しかも、このシール直径が1.5cmぐらいしかないんですよ。そんな小さいシールをどうやって(多くの被害現場である)満員電車で加害者に見せるんだ? という問題もあるでしょう。

 さらに問題になっているのは、ポポ美ちゃんによる警告作戦が通じない場合のシールの二つ目の使用法です。このシールは二枚重ねになっていて、一枚目を剥がすと、赤いインクがあらわれます。このインクを加害者の手などに擦り付けたら、痴漢行為の証拠になりますよ、ということらしい。いきなり積極的な行動に打って出てますけども、さっきまで「怖くて『やめて』と伝えられない女性」を想定してたんじゃないのか! とツッコミたくなります。このシールによって加害者が「インクをつけられてしまうかも」と思えば、痴漢抑止効果も期待できる、と警察の方はおっしゃるのですが、現実的な効果は薄そうに思えてなりません。

 性暴力加害者には「相手も喜んでいた」と勝手に思い込んで犯行に及ぶタイプがいますし、リスクを避けるために大人しそうで従順そうな女性にターゲットを絞ることがあります(性暴力加害者の心理は、以前にもご紹介した『刑事司法とジェンダー』に詳しい)。ですから、加害者に抵抗の意思を見せる手段にシールがなり得ること、また「痴漢した証拠が残りますよ!」というシールの威嚇効果という狙いは間違っていないような気がするんです。でも、繰り返すように、シールの直径は1.5cmしかないんですよね……。抵抗の意思表示にも、威嚇にも使えないよ……。

1 2

カエターノ・武野・コインブラ

80年代生まれ。福島県出身のライター。

@CaetanoTCoimbra

[PR]
[PR]

messy新着記事一覧へ

それでもボクはやってない スタンダード・エディション DVD