インタビュー

子供がいても、楽しく働いていい――『37.5℃の涙』作者・椎名チカ×駒崎弘樹

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椎名チカさん(左)と駒崎弘樹さん(右)

 働く親に代わって子供を預かる仕事「病児保育士」。新米病児保育士の桃子が、家族や愛情のあり方を真正面から向き合う漫画『37.5℃の涙』が今、話題になっている。ベビーカー論争や虐待、ベビーシッター利用者へのバッシングなど、「子育て」に対する厳しい視線が注がれる今、「病児保育」という存在は、社会にどんな問題を提起しているのか。『37.5℃の涙』作者の椎名チカさんと、漫画のモデルとなった認定NPO法人「フローレンス」代表の駒崎弘樹さんが、病児保育、そして「育児」と「働くこと」について語り合った。【前編はこちら

児童虐待の可能性を感じたら……?

椎名 主人公の病児保育士・桃子は利用者さんの家族にかなり踏み込んでしまうので、真面目な上司から怒られるんですよね。フローレンスさんには桃子ほど利用者さんの家族に踏み込む保育士さんはいないとは思いますが(笑)、利用者さんとの距離感って難しくないですか?

駒崎 そうですね、さすがに桃子ほどは踏み込みません(笑)。ただフローレンスには4、50代の病児保育士も多々いて、利用者さんから個人的な相談を受けることはあるみたいですね。「大丈夫だよ」と声をかけたらとても感謝されたという話は聞きます。あと、利用者さんの家に行ったら自分が住んでいるマンションの3階上の人だったってことも(笑)。お互いにびっくり。そこからご近所付き合いが始まったこともありました。

―― 作品には児童虐待を感じさせるシーンもありますよね。フローレンスさんは、虐待の匂いを嗅ぎ取ったとき、どのような対応をされているんでしょうか?

駒崎 フローレンスの場合、入会の際に審査があるので、今まで幸いそういうケースはほとんどありませんね。ただ、たいへん珍しいケースではありますが、親御さんが非常に強いストレスを抱え込んでいることはあります。そうした時は、どのようなケアをするかなど社内会議を開いたり、お子さんが普段通っている保育園の先生に、いつもの様子を聞くようにしていますね。あるいは児童相談所につなげたり。

これはフローレンスの会員ではなく、知り合いの小児科医から相談を受けたケースで、以前、おそらく虐待されているだろうと思われる4歳の男の子の顔半分がすごく腫れて、その小児科に来たことがあったんですね。その知り合いの小児科医が児童相談所に連絡したら「親に聞いたところ『滑り台から落ちただけで、なんでもない』というので、児童相談所としては何もしません」とうやむやにされてしまいそうになりました。そういうときはボランタリーに介入して、フローレンスから「どういうことですか」と連絡して、それでも動かなかったら政治家にお願いしたりとか、いろいろやりました(笑)。

椎名 すごい。

駒崎 こういうケースワークを重ねていくと様々な実相が見えてくるんですよ。児童相談所がパンクしていて機能不全に陥っているとか、親権の強さがあるために踏み込みきれないとか。日々、問題が表れては新たな実相が見えてくる、この繰り返しですね。

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