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教師から生徒への性被害 『スクールセクハラ』が「魂の殺人」といわれる理由

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「スクールセクハラ(以下スクハラ)」という言葉を聞いたことがありますか? これは、学校での、教師から生徒への性被害を指す言葉です。

私は高校生3年生の時に、進路指導を担当していたSという教師から性被害を受けました。被害は卒業までの一年間、毎日のように続きましたが、誰にも相談できず、ただ耐えるしかありませんでした。

私は10代後半から20代にかけ、異性関係でトラブルに合い、自分でも「男運が悪い」と思い続けていたのですが、元を正せば、すべての始まりは高校時代に受けたスクハラだったように思います。

2013年、生徒へのわいせつ行為により、懲戒や訓告などの処分を受けた公立学校の教員は、全国で205名。文部科学省が調査を開始した1977年度以降、最多だったといいます(産経新聞2015年1月31日)。

全国で205名という数字は、どう考えても少なすぎると思います。これは、氷山の一角にすぎません。その何十倍もの少女たちが、誰にも打ち明けられないまま、ひとりで苦しんでいるはずです。

スクハラは長年、闇から闇へと葬られてきました。
被害を訴える生徒がいたとしても、教師が否定したら「先生が正しい。生徒が嘘をついた」とされてしまう。学校での性被害は「あってはならないこと」だから「なかったことにしよう」とする構図は、いじめ自殺で、学校関係者が保身のために事実を隠すのと同じです。

私が被害を受けてから10年以上の歳月が経っていますが、スクハラを取り巻く状況は、今も全く変わっていないと思います。

「生徒のことが好きだった」「恋愛のつもりだった」

池谷孝司著『スクールセクハラ なぜ教師のわいせつ犯罪は繰り返されるのか』 (幻冬舎)は、共同通信社の記者である著者が、10年以上にわたるスクハラ取材をまとめた本。「元生徒が加害教師を呼び出し、当時の真意を聞く」という緊迫した場面から始まります。

智子さん(26歳)は、高校2年生の時、進路面談の場で、担任教師からカラオケに誘われ、車でホテルに連れて行かれて乱暴を受けました。教師からの性被害は、卒業まで続いたといいます。

誰にも言えず、悩みを抱え込むうち、摂食障害になり、高校3年生の時には、体重が30キロ台にまで落ちました。智子さんは、思い切ってクラスメイトに相談を持ちかけますが、「どうしてついて行ったの? その気になれば逃げられたはず。誘いに乗ったあなたも悪い」と責められてしまいます。
卒業後も「私に隙があったからでは……」「私が悪いのでは……」「どうして断れなかったのか」と、自責の念にさいなまれ続けました。自尊心や自己肯定感が持てず、すっかり自信を失って、「ごめんなさい」が口癖になったといいます。
智子さんは「私なんて」と投げやりになり、異性関係でもひどい目にあってしまいます。恋人からDVを受け、駅のホームで土下座させられたこともありました。

智子さんは著者の協力の元、「同窓会の打ち合わせをしたい」と、元担任を呼び出します。教師の前で、
「内申書に響くかもしれないと思い、断れなかった」
「嫌だった。初体験で、怖くて何が起こっているかわからなかった」
と、当時の苦しい胸の内を打ち明ける智子さん。
一方、今も県立高校で教鞭を取っているという50代の元担任教師は、
「恋愛のつもりだった。お互いに楽しんでいた」
「俺が誘った面もあるかもしれないけど、智子のほうが誘っていた面もあったよ」
と、思い出話のように語り、あくまで“合意の上”であったことを強調。二人の認識はすれ違い続け、最後まで教師から謝罪の言葉が出ることはありませんでした。

智子さんはその後、著者とともに、教育委員会に元担任を訴えます。委員会の聞き取り調査に対し、元担任はもう逃げられないと観念したのか、あっさりと事実を認め、懲戒免職になりました。元担任は、智子さん以外にも複数の女生徒にわいせつ行為を働いていたといいます。

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