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林真理子と江原啓之の冷たさにゾッとする

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江原センセがまだ50歳ってことに驚きました。(右・林真理子「地獄の沙汰も美女次第」マガジンハウス/左・江原啓之「スピリチュアル・ヴォイス-人生のきりかえ方-武道館スペシャル 」SMR)

江原センセがまだ50歳ってことに驚きました。(右・林真理子「地獄の沙汰も美女次第」マガジンハウス/左・江原啓之「スピリチュアル・ヴォイス-人生のきりかえ方-武道館スペシャル 」SMR)

 「女性セブン」(小学館)5.14・21合併号に掲載された、江原啓之(50)と林真理子(61)の【GWスペシャル対談】はすさまじくくだらなかった。切り口は、今年2月に起きた神奈川県川崎市の中1男子殺害事件。上村遼太くんという中学1年生の男児が殺害されたこの事件が、「私たちにあまりにも多くの悔恨と教訓を残した」とリード文は綴る。被害児童は不登校で、深夜まで不良グループと出歩いており、顔にも体にもいくつものアザをつくって「暴力を受けている痕跡」が見られたのに、「親や周囲のオトナは事件を防げなかった」として、本対談は【母親の覚悟】を問う内容とされている。この期に及んでまだ【母親の覚悟】に責任を取らせようとする林真理子と江原啓之の無神経に、卒倒しそうになった。

何も考えてないのは江原のほうでは?

 被害児童の母親は、夫の家庭内暴力が原因で離婚している。5人の子供は彼女が手元で養育していた。高校生の長男、中学生の次男(被害児童)、小学生の長女と次女、そして保育園児の三男。母親は、昼は病院で看護職に就き、夜もスナックで働いて生活費を稼いでいた。しかし林真理子は

「シングルマザーでも、貧しくても、きちんと子育てしている人はいっぱいいる」
「子供を貧困の渦の中に巻き込んでは駄目」

 と、手厳しい。貧困の渦に子供が巻き込まれるかどうかを、親の努力次第と切って捨てている。要するに林は天上界から下界を見下ろして「あなたが私のようになれないのは、あなたの努力が足りないからよ」とニヤついているだけなのだ。

江原「元はといえば、覚悟を持って離婚したのかな、ということも、私は思いました」

林「5人もの子供を産んで、なぜ離婚するんですか、と多くの人が思ったのではないでしょうか(中略)離婚するなら、相当の覚悟と同時に、経済的な保証、祖父母の協力も得られるのかどうか、事前の準備もいるはずなんです」

 なるほど、彼らの理屈では、「覚悟も経済的基盤もなしに離婚届に判を押した母親は考えなしだ」ということになる。父親が逃げてしまったり、暴力をふるって家庭を崩壊させたり、離婚後に養育費を支払わなかったりといった無責任には一切言及されないのが不思議だ。我慢せずに離婚を切り出した母親、あるいは離婚を切り出されて粘らず承諾した母親が悪い、ということにされている。

 ただ補足もされていて、「経済的に余裕がないならば、児童施設に預けるなどの手立てを考えるべき」「生活が安定するまで、祖父母に子供を預ければよい」などの提案がある。せっかく対談でそこまで話が広がったのだから、この議論をもっと深めることもできたはずだ。「母親たるもの、子を産んだら自らの力で一人前に育て上げることが務めだ」という思い込みを瓦解させ、子育てを家庭内の問題として処理させずに社会で子供の成長を支援する取り組みこそ急務だ……といった方向性へ舵を切っても良かったのだ。

 しかし2人は、「今のお母さんたちは自分に甘すぎる」と批判する方向に展開してしまう。「いくつになっても女でいたい」と望む母親たちを想定して、これでもかとばかりに責めまくる。

江原「家事育児は放棄、それでいて自分は欲望のままに生きたいなんて、自分に甘すぎますよ」

林「せめて子供が義務教育を終えるまでは我慢して自分のことは後回しにしなくちゃ」

江原「何も考えずに結婚をして、何も考えずに離婚をして、何も考えずに子育てする人がどれほど多いか」

ネットを怖がるジジババたち

 さらに貧困から抜け出せない人々についても、彼らは現状を正確に認識しようとしないまま話をすすめていく。林いわく「手に職を持って一生懸命働くとか、努力した人、能力が高い人はそれなりの待遇を得ているんですよ」。裏返せば、貧困層の人々は「一生懸命働いていない、努力していない、能力が低い」。確かに林真理子は必死に努力して今の地位まで駆け上がったが、彼女の主張は「ですから皆さんもそうなさい」の一点張りでまことに救いがない。

 さらにトンチンカンなのは、江原が「母子家庭で子供が3人いて貧しくて」と嘆いて相談に来る女性に対して、「子育てなんかあっという間だから今は貧しくても我慢しなさい。子供たちが働けるようになったら、1人が20万円の働きだったとしても、4人合わせたら80万円ですよ」とアドバイスするという話だ。それでは子供たちは新しい家庭を持てないし裕福になれないし自立できないと思うのだが……。老いた親の生活を支えるのが親孝行? 子供は年金代わりの投資か? 「孝行してもらうためにお子さんを立派に育て上げなさい」と説く老人たちの薄気味悪さをあらためて確認した。

 そのうえ江原は自らの子供時代を振り返って、貧乏だったり夫婦喧嘩が絶えなかったり夜逃げしたりという荒んだ家や地域はあったが「誰もがどこかで他人の痛みがわかっていたから、今の時代みたいな陰惨ないじめはなかった」とさも美談のように語る。そんな嘘くさい話を聞かされてこちらは絶句するしかない。なぜ陰惨ないじめがなかったと言い切れるのか、どうして「昔の人は他人の痛みがわかっていた」と言えるのか、読者はちっとも納得できないのに彼らは「そうよね~」と微笑し合ってオワリにしてしまう。想像力が欠如しているのはアンタら自身だろうと言いたい。江原や林の言葉はいちいち、「あなたのことを思って」という姿勢を見せ付けるわりに、実に非情だ。ゾッとするほど冷たいと言ってもいいだろう。そりゃあ、親類縁者でもなく利害関係もない他人がどうなろうと知ったことではないだろうが、ここまで「THE・他人事」感満載でおしゃべりしているだけのジジババ対談を重宝する理由がどこにあるだろうか。

 最終的に対談は、彼らにとって一番「自分事」に近いテーマ、「コンピューターって恐ろしい」「インターネットって刺激が強すぎるわよね」というところに落とし込まれる。林は、15歳以下の青少年のPC、スマホ使用について夜9時以降は禁止すべきと具体的に提案し、「国をあげてやったらできないわけはないでしょう」とまで言う。自らへの批判が書き連ねられ、伝播していくツールは、彼らにとっては脅威なのだろう。よその子供にネット接続を禁じるのではなく、自分たちこそがネット断食でもしてみてはどうか。

 林真理子も江原啓之も、自分に火の粉が飛んでくる「コンピューター/インターネット」は国をあげて規制してもらいたいけれど、シングルペアレントの子供たちが貧困から抜け出し十分な教育を受けて稼げる大人になるための施策について国に提言することなどはなく、各家庭の親たちに「努力が足りない、頭が悪い」と文句をつけておしまいだ。加えて「私たちの頃は、こんなんじゃなかったわよね~」「いやあね~、最近の子供たちはかわいそうね~」と世の中を憂う。そんな世間話はわざわざ誌面で公開するほどのものではない。

(清水美早紀)

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