――いいですね。働き者でチンコがでかくて。
吉田「言うことないでしょ。料理も上手いしね、私より」
――まだ前夫さんの話に触れるのは恐縮なんですけど、前回の結婚時は、潮さんが浮気しまくってたけれどそれでも週に1回夫婦のセックスがあったんですよね。ただ、気持ち良くなれるのは5回に1回くらいだったと。今の旦那さんとは月に1度程度の頻度なわけですが、大体気持ち良くなってるんですか?
吉田「今は大体、ほぼほぼ毎回気持ちいいですね! でもお互いに疲れてたり、向こうが疲れててもう勘弁してくださいって言ってたら満足してなくてもしょうがねーなっていうのはあります。まあ100%いつも満足ってことはないでしょ、人間だもの」
――そこの折り合いも付けられるようになったんですね。
吉田「今ってさ、家族の形態が多様化してるのが実際だと思うんですよ。だからムリヤリ『家族とはこういうものだ! これがスタンダードなのだ!』って押し付けても、ハマれない人があぶれるだけ。最近、渋谷区でパートナーシップに関する条例が可決・成立したけど、LGBTだけじゃなくヘテロの人で事実婚の人だっているじゃない。で、片方が入院して手術する時にパートナーであっても公的な証明書がないと手術や入院の同意書を書く資格がなくて、彼が嫌いな家族を呼び寄せないといけないとか、実に面倒くさいよね。だって実の親だからって彼にとっていい人なわけじゃないし、毒親かもしれないのに」
――そうですね。制度が実在の人間の多様性に追いついていないように思います。
吉田「大体、年をとっておばあちゃんになったらさ、旦那が先に死ぬかもしれないじゃない? 女の方が平均寿命長いし。で、子供もいなかったら家族なんてもういないじゃない。そうなったら、『家族が看取るもの』って常識ももう通用しないよね。私、女友達と『最終的にはみんな同じ土地で暮らそう』なんてユートピア妄想するんですよ。彼女も私も結婚してるけど、旦那が先に死んじゃったら、ばばあ同士で仲良く暮らそうって」
――いいですね。私も女友達とわりとそういう話しがちです(笑)
吉田「するよね。私はスモーカーで友達はノンスモーカーだから、ちゃんと分煙で別棟にして、でもご飯はみんなで食べようよ、みたいなそんな話をいつもしてるんですよ。それが家族ってことになってもよくない? ファミリーじゃなくてユニット。性別とか年齢とかあんま関係なくて、私たちユニットしました! みたいになってさ」
――おめでとう!って。
吉田「中村うさぎさんだってさ、ゲイの旦那さんがいるでしょ。あれ実は理想なんじゃないかなって気がするのね。セックスはお互いよそに求めるけど、ユニットを組んで助け合おうっていうさ。うさぎさんが病気になった時、旦那さんはユニットとしてちゃんと機能したじゃないですか。アレに私たちは学ぶことが多いと思うんですよね」
――むしろ恋愛発端の、好き同士の結びつきだけだと、いざという時にリスキーじゃないかと私は思います。それって何の約束にもなってないじゃないですか。
吉田「そう。好きってね」
――最後に、先ほどの「結婚とはこういうものだ」という話に戻ってしまいますが、私は結婚したら夫婦は毎日一緒に仲良くしなきゃいけないって規範を自分で頭の中に構築してしまって、自縄自縛でした。旦那は毎日一緒にいてくれないから、私のこと好きじゃないんだって思って、勝手に淋しくなって落ちこんだり空回りしてたんですよね。メンヘラ的な。好き同士で結婚した男女なのだから大切にし合う“べきだ”と思っていて、大切にしてほしいのにしてもらえてない、好かれてないんじゃないかというストレスと欲求不満が募って、結婚生活自体は不幸でした。その状態から今は解放されて、ハッピーなので、これも「幸せな離婚」だったと捉えています。
吉田「ああ、結婚生活中に自分の気の持ちようを変えたら、夫婦でいるのもラクだったかもしれないですよね。適度な距離を保つのが、一番長く結婚生活を続ける秘訣なのではないかと最近思い始めているんですけど。まあ自分が別居婚だからね。でもさ、不満抱えながら解消できずに我慢して生活していくより、自分の求めるモノを掴んでく人生っていうのが楽しくないですか? 常に主語が自分のほうが楽だなって。私はね、20代より30代のほうが楽しかったし、40歳過ぎたらさらに一気にラクになった。中年って楽しいんだよね。それはどんどん『自分は』を主語にできるようになっていったから」
――自分を主語にして物事を考えられたら、確かにラクになります。他人からどう見られるかを意識しすぎると、主語を見失って苦しくなっていきますよね。本日はどうもありがとうございました。
●吉田潮(よしだ・うしお):
ライター・イラストレーター。法政大学卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。「週刊新潮」(新潮社)、「ラブピースクラブ」(ラブピースクラブ)などで連載中。主な著書に『2人で愉しむ新・大人の悦楽』(ナガオカ文庫)、『気持ちいいこと。』(宝島社)、『幸せな離婚』(生活文化出版)など。カラオケの十八番は、りりぃの「私は泣いています」、金井克子の「他人の関係」(淫らなフリつき)など。
(取材・構成/下戸山うさこ、写真/斉藤泉)