関心を示したからといって理解できたわけではない
このニュースに対してついたヤフコメの中でも、特に多く「共感」されているものを要約して抜粋します。同性愛に理解を示しているようで、実は……? というコメントが多くてびっくりしてしまいました。
「同性愛は批判しないけど、不受理と分かっていて提出するのは、役所も憂鬱だったろう」
「受理されないとわかっているのに提出するのは業務妨害」
「役所の人がかわいそう」
同性愛を批判しないなら、同性愛者が異性愛者と同等の権利を持つことも批判しないはずです。だとしたら、「不受理」こそが重要な論点で、「役所も憂鬱」は関係ないのでは? 不受理証明が発行されるということは、役所は決められた範囲の仕事をしています。一之瀬さんや杉本さんがクレーマーのように、役所で騒ぎ立てていたならともかく、一ノ瀬さんの文章を読む限り、円滑なコミュニケーションを計れている時点で、余計な負担はかけていないでしょう。つまり「業務妨害」と謗る根拠はないのです。
「話題づくりに必死のような気がしてならない。注目を浴びる意味はあるかもしれないが、同性愛者が余計に心苦しく感じるのでは」
もちろん同性愛者への関心が高まれば高まるほど、当事者が苦しむ状況は出てきてしまうのかもしれません。しかしこれでは、「息苦しい社会でも黙っていろ」と言っているだけです。黙っていたら何も変わらないから、行動に起こすしかないのではないでしょうか。
「何もかもを求めるのではなく、今の状況に感謝したほうがいい」
感謝できるような状況ではないからこそ、求めているわけですよね。「何もかも」を求めているわけではないと思いますよ。一ノ瀬さんと杉本さんは、好きな人と結婚をしたいと言っている。ただそれだけだと思うのですが……。
「渋谷区が同性愛を認めるみたいだから、引っ越せば」
「同性愛を認める」は「同性婚」を認めるのことでしょうか? 渋谷区の同性パートナーシップ条例は同性婚を認める条例ではありません。あくまで地方自治体なのでそこまではできないのです。それに徐々に指摘され始めていますが、同性パートナーシップ条例によって可能になることは、区営住宅での同居など、些細なものばかりです。さらに、そんな簡単に引っ越しできるものじゃないでしょう。しかも渋谷ですよ、どれだけお金がかかると思っているんですか……。
「他にもやり方があったはず」とコメントする方も多くいるのですが、せっかくですからその「他の方法」も書いて下さったらいいのに、と思いました。
関心が高まることと理解が深まることはまた別の問題なんだと実感させられるヤフコメでした。とはいえ、差別や偏見の存在を知ったからといって、すぐさま言動を切り替えることはできないものです。関心を持ち続けて、自身の中にある差別や偏見を少しずつ見直せたらいいですね。一ノ瀬さんと杉本さんのこれからにも注目していきましょう。
(門田ゲッツ)
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