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児童への性虐待「成人まで時効停止の方向で検討」がなぜ必要なのか

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オレンジリボン運動公式サイトより

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 時事通信によると、自民党の「女性の権利保護プロジェクトチーム」が、性的虐待に関する時効について、被害者が成人するまでは時効を停止する方向での見直しを検討し始めたようです。

 現行の法律では、虐待被害を受けた日から時効が計算されるため、成人後に訴えを起こしてもすでに時効を迎えていて訴えが成立しないケースがありました。例えば、幼児期の時に性的虐待を受けた被害者が、成人してからPTSDなどを乗り越え、加害者に対して訴えを起こそうとしても、民事での損害賠償請求権が消滅してしまう20年間が経過していた場合、泣き寝入りをするしかありません。例えば6歳の時に親戚のおじさんなどから性的な被害を受けたとして、26歳までに訴えなければ民事裁判を起こすことは出来ません。

・民法第724条:被害者又はその法定代理人が損害および加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から20年を経過したときも同様とする。

 なお、刑事の場合の公訴時効期間は民事よりも短く、強制わいせつの場合は7年、強姦の場合は10年です(性犯罪の公訴時効期間及び改正経緯)。6歳で強制わいせつ被害を受けた子が13歳の時点でもう時効となるわけで、加害者にとってはやりたい放題です。

 このようなケースを防ぐ手立てとして、幼少期に虐待を受けた被害者が、成人後に加害者の責任を問えるように立法措置を取りたいと考えているようです。

ことの経緯は?

 プロジェクトチームの座長を務める馳浩議員のブログによると、先月17日に「性的虐待に関する時効制度の改正及び被害者救済制度の整備について」という議題で、寺町東子弁護士と寺町弁護士が支援する原告へのヒアリングを行っています。

※寺町東子弁護士はchange.orgにて、「性的虐待の時効は大人になるまで停止して下さい。子供が全国どこでも助けを求められる体制を!」というキャンペーンを実施中。

 そこでは「性的虐待被害者支援のために、公訴時効と民法第724条の20年間の除斥期間の起算点を、20歳からにする」「性暴力被害者の救済のためのワンストップセンターを全都道府県に整備し、児童相談所と連携すること」の2点が要望されたとのことで、今回の報道によると、前者について検討されたということでしょう。

 ちなみに馳議員は児童虐待防止法の制定および改正に積極的に取り組んできた議員。当時の様子は『ねじれ国会方程式 児童虐待防止法改正の舞台裏』(北國新聞社)に詳しく載せられています。

児童虐待と性的虐待の現状

 厚労省によると、児童虐待相談の対応件数は、平成23年が59,919件、平成24年が66,701件、平成25年が73,802件と毎年増加。資料で確認できる限り、平成2年から常に増加している状況にあります。

 平成25年の児童虐待相談件数の内訳は、身体的虐待が24,245件(32.9%)、ネグレクトが19,627件(26.6%)、性的虐待が1,582件(2.1%)、心理的虐待が28,348件(38.4%)と、性的虐待が最も少ないことになっています。

 しかし、馳議員が性的虐待について、

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性的虐待は、児童虐待の中でももっとも親子再統合が難しい案件。
「なかったことにしてくれ」
「おまえさえだまっていれば」
「親族の恥」
などとして、被害者が二重の被害を受ける事案。
魂の殺人でもある。
カミングアウトしても、関係各所をたらいまわしされ、同じことを何度も告白させられさらに傷つく事案。
幼児や少女(少年)時代の被害は、生涯の精神的負担。
成年時の性暴力事件と比べても、はるかに重い量刑が必要でもあろう。
今後、このPTにおいて、真正面から取り扱うことを確認。

***

 と綴っているように、性暴力は被害者が声を出しにくい犯罪です。これは同じく性犯罪である、痴漢や「スクールセクハラ」(教師から生徒への性被害 『スクールセクハラ』が「魂の殺人」といわれる理由)と同様のことが言えるでしょう。おそらく隠れた被害者は相当な数存在するのではないでしょうか。

 すると必要になるのは、時効期間の延長だけでなく、被害者が相談しやすい環境です。つまり、先ほど寺町弁護士が要望したというポイントの2点めの「性暴力被害者の救済のためのワンストップセンターを全都道府県に整備し、児童相談所と連携すること」が重要になるということです。馳議員および「女性の権利保護プロジェクトチーム」はぜひとも被害者が相談しやすい環境整備も同時に進めていただきたい。そして何よりこれ以上被害者が増えないような対策もお願いしたいと思います。
(水谷ヨウ)

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