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新卒時点で借金600万。奨学金ローンに「国立大学の授業料UP検討」が追い討ち、貧困家庭から脱出の機会を奪う

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Photo by Japanexperterna.se from Flickr

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 今月11日、財政制度等審議会で国立大学の授業料引き上げや救急車を一部有料化するなどの検討が提案されました。

 国立大学の授業料は、「国立大学等授業料その他の費用に関する省令」によれば、年間53万5800円を標準として、各国立大学が定められるとなっています。私立大学の授業料が平均して年間86万72円であるのに対し、33万円ほど安い計算になります。

 報道によれば、財務省は「国立大学に通う学生は富裕家庭の子供が多い」というロジックで、今回の授業料引き上げを検討しているようです。また現在公開されている参考資料の13ページには、「生涯賃金は学歴が高くなるにつれ増加する傾向。大学を卒業した者は入在学時に要する費用に比して、受ける恩恵が非常に高い」「国立大学と私立大学の授業料を比較した場合、国立大学の授業料は私立大学の概ね6割程度の水準となっている」とあります。

 つまり財務省は、「卒業後の恩恵を考えれば、入在学時の費用は高くない(むしろ安い)」上に、「国立大学は私立大学に比べて学費が安い」さらには「国立大学は富裕家庭の子供が多い」から、授業料を引き上げてもよい、と考えていると推測されます。

授業料引き上げは正反対の検討では

 先日、大阪都構想の賛否を問う住民投票で、賛成を反対が上回ったことで、今期限りで政界引退を表明した大阪市長の橋下徹氏は、大阪府知事時代に、財政再建の一環で行われた私学助成削除をめぐって高校生と直接議論したことがあります。

「私学助成がなくなると高校に通えなくなってしまうのではないか」という不安を打ち明けた私立に通う高校生に対して、「いいものには値段がかかる」「(公立に通えるほど)勉強しなかった」「自己責任」「最後には生活保護がある」といった発言をしたことで話題になりました。

 経済的に裕福でない家庭でも、「授業料の安い国立大学であれば子供を通わせられる」という保護者は少なくないでしょう。しかし今回検討されている授業料の引き上げが実現した場合、私立大学だけでなく国立大学にも学費を捻出できず通えない家庭が出てくることになります。「(国立に通えるほど)勉強しなかった」という発言ですら聞こえなくなくなるわけです。

 そもそも「生涯賃金は学歴が高くなるにつれ増加する傾向」があるならば、貧困の連鎖を断つために、子どもたちの学習機会は可能な限り平等にするべきではないでしょうか。学習意欲はあるが、家庭の経済的な事情で授業料の高い私立高校・大学に通えない子供に対する援助こそが必要なのであって、今回の授業料引き上げ検討は、その正反対を行っていると言えます。

卒業までに600万近い借金を背負う

 日本は教育機関への公的支出の割合はOECD加盟国のうち比較可能な30カ国の中で最下位。各家庭にかかる教育費負担が高いことで知られています。

 その上、奨学金利用者の割合も少ない。一部例外を除き給与型奨学金は利用できず、利子のない貸与型奨学金と利子のある貸与型奨学金の利用がほとんどです。つまり返済が必要なのです。

 借りた金を返すのは当たり前じゃないかと思うでしょうが、利子のある貸与型奨学金を使うとどれだけの借金を背負うことになるのかを、日本学生支援機構の「奨学金貸与・返還シミュレーション」を使って計算してみました。

<第二種奨学金、4年制大学、毎月12万、入学時特別増額利用しない、機関保証制度利用しない>

 すると、4年間で576万円の借金を背負い、月に約3万2000円返還しても完済まで20年かかる計算になりました(返還総額は775万1445 円)。

 経済的に厳しいために奨学金を利用した学生に対して、これほど大きな借金を背負わせるのは酷なことではないでしょうか。在学中に大病を患ったり事故にあったりして、留年せざるを得ない状況になった場合は、1年分貸与額が増えることになります。さらに入院費用なども支払わなければいけない。これもまた、自己責任で済ませられるものでしょうか。

 奨学金返済の延滞者(3カ月以上)は平成25年度で、19万4153人。奨学金返済のために風俗店でバイトする女子学生がいることや、返済できないため自己破産したが、保証人である親に返済義務がうつるだけという報道も見聞きしています。こうした厳しい背景がある中で、国が何の対策もせずに、ただ国立大学の授業料を引き上げることは、経済格差を広げるだけでしょう。
(門田ゲッツ)

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