カルチャー

アラサー独身女性は全員べつべつの生き物だという自明のこと

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東京タラレバ娘

東村アキコ『東京タラレバ娘』一巻、二巻(講談社)

 30歳過ぎて独身の女は、イタい――ということになっている。まだ結婚していなくても結婚予定の彼氏がいればまあOK。不倫常習はNG。彼女持ちもNG。とにかく特定の“男”と結婚を意識した恋愛由来の信頼関係がない女はもっともイタい。そんな空気が大前提として共有されている。どこで? 日本で。そうかな? そうなんですよ。その証拠が、東村アキコの『東京タラレバ娘』(講談社)じゃないんですか!? あれです、全国の独身アラサー女性たちの“突かれたくないツボ”を的確に突きまくって阿鼻叫喚地獄に陥れていると大評判の『タラレバ娘』です。

不安だから結婚したい

 東京生まれ東京育ちの33歳独身女性。倫子(表参道のヴィンテージマンションの一室を事務所とする脚本家)、香(表参道でサロンを経営するネイリスト、実家住まい)、小雪(原宿にある赤提灯の居酒屋が実家、店手伝い)の3人は高校時代からの親友で、しょっちゅう小雪の店で飲んだくれている。一巻では全員が彼氏なし、二巻では香が元カレのセフレになり、小雪は超好みの男と不倫スタート、倫子はイケメンモデルと一発イタすものの変わらず全員彼氏はなしだ。

 倫子たちは何となく結婚したがっている。倫子は10年前に告白してきたダサADから食事に誘われて「プロポーズされちゃうのかも?」と浮き足立つが、完全に勘違いで落ち込む。香は倫子を励ますべく、「仕事頑張って自分磨きも怠らず、小顔マッサージと岩盤浴とシートパック、ネイル!! それさえきっちりやって“れば”、もっともっといい男現れるから!!」と言い、それでもって「痩せてキレイになっ“たら”いい男に愛される」「そのいい男を自分も好きになれ“れば”結婚が待っている」と鼓舞しあう。そんな3人のタラレバ娘たちに、「うるさいよ。いきおくれ女の井戸端会議」と辛辣な言葉を投げかける役目をマンガ内で負わされたのは、若き金髪イケメンモデルだ。彼はズバズバと彼女たちのみっともないところを指摘し、傷をつけまくっていく。

 この男の言うことは全部正論だ。だって客観視したら、倫子たち3人はどうしようもなくみっともない。

 自立した女を自称しているくせに、仕事で挫折すると「婚活する」と言い出すし、婚活パーティーでは若く可愛い女性陣に気後れして逃げ出すし、直後に「独身女の使えるものは貯金だけ!」と2万のエステに行ってみたり高級旅館で酒盛りしたりするし。いやいや、仕事で挫折して自信喪失したら、また仕事で頑張ることでしか取り戻せないじゃないですか。将来が不安なほど稼げなくなっているなら散財するより貯金でしょ。だからこの人たちはえらくみっともない描かれ方をしてると思う。素敵な男に結婚で幸せにしてもらいたい、なんて、自己主張が強いわりに主体性がない。

 で、このタラレバ3人娘は、東村アキコの友人女性たちがモデルになっている。東村はアラサーで妊娠・結婚・出産、後に離婚をし、5年間のシングルマザー生活を経て一昨年再婚した女性だ。現在39歳。そんな東村の友人たち(アラサー・アラフォー女性、推定15人)が急にこぞって「いいかげん結婚したい」と言い出し、相談役を受けることに飽きてきた東村が「だったらコレ マンガに描いてやろうと思って」この作品が誕生した(一巻あとがきより)。その“友人たち”は、一巻を読んで「ホラーマンガですよこれ!」「なんちゅーもん描いてくれたんすか」「ひどいっすよ」と青筋立てて泣きながら訴える(二巻あとがきより)。

 ただ、結婚は約束ではあるが安定ではない。単純に言えば、相手に嫌われるかもしれないし自分が相手を嫌いになるかもしれない。男性学を研究する社会学者・田中俊之(武蔵大学社会学部助教)が著した話題の書籍『男がつらいよ 絶望の時代の希望の男性学』(KADOKAWA)にも、「異なる環境で育ち、違う価値観を持つ人と暮らすことは、不安定そのものです。結婚は対立や争いの連続なのです」とある。まあ、男女共に結婚して子供を持つことで社会的信用が飛躍的に高まる現実も見過ごせないが……。しかし彼女たちは、社会的信用を求めて結婚したがっているわけでもないのだ。

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