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朝井リョウに見る「多数派の思い込み」としてのコミュ力

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柴田英里

(C)柴田英里

 ひさしぶりに、「週刊文春」(5月28日号)を買って読みました。対談連載「阿川佐和子のこの人に会いたい」のゲストが、個人的に苦手なタイプ過ぎて著書が一切読めない、ベストセラー作家・朝井リョウだったので、怖いもの見たさで読みたかったのです。

 基本的に「作品と作者は別」と考えているのですが、朝井リョウの「露骨にコミュ力高そうで、誰に恨まれることなくそつなくなんでもこなせそう」な感じだけは、本当に本当に苦手なのです(ただ、私は朝井リョウdisをなさっているしQちゃんの中の人ではありませんので誤解なきようお願いします)。

可愛い女が恋愛しないはありえない?

 私は「空気を読む」ことが苦手で、暗い性格ではないのですが、ニコニコ爽やか笑顔よりもニタニタ•ニヤニヤ含み笑いがデフォルトのタイプです。コミュ力、EQ(「Emotional Intelligence Quotient」の略、日本では「こころの知能指数」ともいわれている)ともに底辺に近い人間なので、老若男女かかわらず、ステータスに「コミュ力MAX」と書いてありそうな人に、ほぼ逆恨みに近い苦手意識を持ってしまうのです(ちなみに二次元キャラで一番苦手なのは少女マンガ『君に届け』の風早君です)。

 まあ、そういう個人的逆恨みによる悪口は置いておいて、阿川佐和子による朝井リョウのインタビューを読むと、社会で「コミュ力」と言われているものって、本当に「コミュニケーション能力」なのかなあ? と疑問に思いました。

 この対談で、朝井リョウは、「アイドル」をテーマに書いたという新作『武道館』について、「アイドルは現代の『異物』である」と定義した上で、「(アイドルは)絶対に両立しない欲望を叶える存在だからです。例えば、きれいで可愛くなきゃいけないけど、恋愛はしちゃダメ。これって、本来は両立しないじゃないですか」と豪語し、これに対して阿川佐和子は「うーん……」と言葉を失っています。

 「きれいで可愛くなきゃいけないけど、恋愛はしちゃダメ。これって、本来は両立しない」つまり、朝井リョウは、「(女性が)きれいで可愛くあることは100%恋愛のためである」と疑いなく“自然”に定義しています。

 ですが、美容整形をする女性が整形をする理由は「(異性との)恋愛のため」よりも「より自分の理想に近いビジュアルの自分になりたい」「化粧の時間を短くしたい」という理由の方が多いことは、谷本奈穂『現代日本における美容整形−−−アイデンティティをめぐって』などの研究にも出ていますし(京都精華大学『ポピュラーカルチャー研究報告書』より)、アイドルのように、「容姿や振る舞いで多くの人から注目されること」と、「恋愛」も、目的が「アイドル活動によって多くの人から注目された上で多数の人と付き合ったり乱交したい!」みたいな理由でもない限りは、全然別の目的に見えてしまいます。

 朝井さんの定義する「きれいで可愛くなきゃいけないけど、恋愛はしちゃダメ。これって、本来は両立しない」という“自然”は、私にとっては“不自然”でしかありません。

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柴田英里

現代美術作家、文筆家。彫刻史において蔑ろにされてきた装飾性と、彫刻身体の攪乱と拡張をメインテーマに活動しています。Book Newsサイトにて『ケンタッキー・フランケンシュタイン博士の戦闘美少女研究室』を不定期で連載中。好きな肉は牛と馬、好きなエナジードリンクはオロナミンCとレッドブルです。現在、様々なマイノリティーの為のアートイベント「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」の映像・記録誌をつくるためにCAMPFIREにてクラウドファンディングを実施中。

@erishibata

「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」

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