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コップのカドでグリ美ちゃん問題に見る“ふざけた場所”への弾圧

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(C)柴田英里

(C)柴田英里

 先日、messyで『「コップのカドでグリ美ちゃん」、性的に消費される女児の憂鬱』という記事がアップされました。この記事はコメントも150近くつき、またTogetterまとめなどでもまとめられるなど、ネット上で大きな話題になりました。直接の苦情も店舗に届いたようで、私がヴィレッジヴァンガード上野店に行った5月31日(日)には、商品は既に取り扱い中止措置がとられていました。

 私は正直、実在する少女をモデルにしたわけでもない商品であるグリ美ちゃんが、ヴィレッジヴァンガードでカプセルトイとして販売されることに、なぜそこまで非難の声があがるのかわかりません。

 グリ美ちゃんが実在する子役やローティーンアイドルをモデルにつくられていたり、販売された場所が「西松屋」や「トイザらス」といった、乳幼児や未就学児童のための商品を販売する場所であったのであれば問題です。

 ですが、ヴィレッジヴァンガードって、そもそも「アングラサブカルアウトロー上等!!エログロナンセンスノーゾーニング!」な、「ふざけた店」として人気を博したお店です。近年はFC店も出来、イオンやイトーヨーカドー、ルミネやマルイといったショッピングモールやファッションビルに入る店舗が多くなったので、アングラサブカルアウトロー臭はずいぶん払拭されてきましたが、いずれにせよ、「ふざけた場所」であることには変わりないのではないでしょうか。

 ここには、「ヴィレッジヴァンガードへの認識の違い」と「ヴィレッジヴァンガードの変容」という2つの問題があります。

 グリ美ちゃんがヴィレッジヴァンガードで取り扱われることに反対である人の多くは、「ヴィレッジヴァンガードは子供がよく出入りする場所である」という認識です。この「子供」というのがどの程度の年齢を想定しているのかはわかりませんが、仮にグリ美ちゃんと同年代の10歳くらいまでの年齢の子供を想定すると、私は、ヴィレッジヴァンガードの顧客にその世代の子供はかなり少ないように思います。また、「子供」の範囲を中高生といった未成年に広げるとすれば、個人的には彼らの判断能力をナメているように思うのですが。とにかく、「ヴィレッジヴァンガードは子供がよく出入りする場所である」という認識を持つ人からすれば、「けしからん」となるのでしょう。そして繰り返しになりますが、「子供がよく出入りする場所である」という根拠は、「ショッピングモールやファッションビルに入っているから」というもの。十数年前であれば、「アングラサブカルアウトロー上等! なヴィレッジヴァンガードに低年齢の子供を連れて行く方が悪い」の一言で済む問題でした。

 しかし、前述したように、今はショッピングモールやファッションビルに入ることも多く、アングラサブカルアウトロー臭を徐々に廃し、オサレ雑貨屋さんの雰囲気を獲得していったヴィレッジヴァンガードですが、今も昔も「斜に構えたふざけた店」であることには変わりがないように思います。

 さらに言えば、ヴィレッジヴァンガードが全国のショッピングモールやビルに入るようになった背景には、多くのショッピングモールやビルの利用者に、「斜に構えたふざけた店」が求められたことがあるのではないでしょうか。「斜に構えたふざけた店」を至るところに求めながらも、一方で「子供は斜に構えるべきではないし、ふざけるべきではない」と、規制したがる。健全な文化を求める子供だけが存在するわけでもないように思うのですが、健全なものしか与えられない子供というのもなんだか可哀想です。

 いずれにせよ、「ヴィレッジヴァンガードは子供がよく出入りする場所である」という主張する方の中には、ヴィレッジヴァンガードがふざけた店であることを知らないで批判している方も少なくはないのでしょうか?

 子供は、ある朝突然毒虫になった『変身』のグレーゴルザムザのように、一瞬で大人になるわけではなく、知識や経験や判断を重ねて行くことで、徐々に育っていくものです。「全ての子供が不健全なものを見ないように!」という正義のもとで情報が統制され、あらかじめ判断力を封印されることや、「ふざけた店」が、「ふざけるな」という理由でふざけられなくなることほど子供を抑圧することも少ないように思います。

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柴田英里

現代美術作家、文筆家。彫刻史において蔑ろにされてきた装飾性と、彫刻身体の攪乱と拡張をメインテーマに活動しています。Book Newsサイトにて『ケンタッキー・フランケンシュタイン博士の戦闘美少女研究室』を不定期で連載中。好きな肉は牛と馬、好きなエナジードリンクはオロナミンCとレッドブルです。現在、様々なマイノリティーの為のアートイベント「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」の映像・記録誌をつくるためにCAMPFIREにてクラウドファンディングを実施中。

@erishibata

「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」

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