さて、こうした悪質なプロダクションは、女性に対して危害を加えているという問題だけでなく、同業他社の足を引っ張り、業界全体の信用を失わせると考えられます。AV業界に限らず、芸能界は「枕営業」のような「真実かどうかわからない黒い噂」が週刊誌やウェブ上で日常的に囁かれています。そして実際に、芸能界デビューをちらつかせ、中学生にわいせつな行為を働き、児童福祉法違反で逮捕されたベレン・オリバー・ベッティ容疑者のような、「黒い噂はやはり真実だった」と思わせる事件もあります。
このような事件が相次ぐと、ある程度名前の知れている大手プロダクションはさておき、比較的小さい事務所は、どんなにコンプライアンスがしっかり行き届いていたとしても、疑いの目で見られてしまうでしょう。すると、業界が欲する人材にめぐり合えたとしても、スカウトが困難になってしまう可能性もあります。伊藤さんのような弁護士の活動を支えることはもちろん、社会的な法整備を進めていくための働きかけや、業界内での職業倫理の問い直しが必要となってくるでしょう。
そして実際に被害者になり得る女性たちには、まずは安易な勧誘にのらないよう気をつけていただきたいです。スカウトから名刺を渡されたら、即決せずに知人に相談をしたり、帰宅後に事務所の評判を検索するとよいと思います。場合によっては、法務局で法人登記謄本を請求するのも手です。それによって、法人登記すらしていない違法なプロダクションかどうかを知ることも出来ますし、謄本に記されている責任者の名前を調べれば、そのプロダクションの雰囲気をつかむこともできるかもしれません。また被害にあってしまった方は、泣き寝入りせず、伊藤さんが記事で紹介されている「ポルノ被害と性暴力を考える会(People Against Pornography and Sexual Violence: PAPS)」などの団体に相談することも考えてみて下さい。
(水谷ヨウ)
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