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少子化なのになぜ待機児童? 「育休退園」問題から考える

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【シリーズ 少子化と児童福祉 01】

 埼玉県所沢市で、今年4月から採用となった新保育制度が、大きな波紋を呼んだ。同市の保育園に通う0~2歳の児童を対象に、その母親が2人目以降の子を出産し育児休暇を取得した際に児童を退園させる……という内容である。

 退園児童が出ることで、0~2歳という待機児童数が多い枠の“アキ”をつくり、待機児童を解消することが狙いのようだが、「女性の社会進出を阻み、子供・子育て支援法などに違反する」として、同市の保護者8世帯11人が25日、市を相手取り退園の差し止めを求める行政訴訟をさいたま地裁に起こした。

所沢市だけの問題じゃない「第二子出産で保育園退園」

 6月28日放送の『サンデージャポン』(TBS系)でこの問題を取り上げた際、杉村太蔵が「会社から育児のための休暇をもらっているならば、基本的に育児は自分たちの家庭でやってください」、テリー伊藤が「1~2歳の子は親と一緒にいたいんじゃないの? 親が好きなんじゃないの?」「(訴訟を起こした保護者たちは)子供を盾にしてる感じ」と発言。

 この国が「保育は家庭で行うべき」という理念を原則としていることはわかる。しかし、家庭内で密室育児になってしまい、虐待などの悲劇を生む可能性をはらんでいる点も無視できない。孤独な育児は母子共に危険に晒す。それは「母親が昔より弱くなった」せいではないし、「甘え」でもない。いまさら誤解している人もいないと思うが、親が子供を保育園に託児することは、「ラクしてゴロゴロ昼寝したいから」ではない。仕事(求職含)や疾病や介護など、理由が存在しなければ入園できない仕組みになっている。保育が必要だから預けたいのに、預け先が足りなくて親たちは困っているのだ。

 今回、所沢市を提訴した保護者陣が「(第二子以降の)育休期間が終わり復職する際、保育所の定員が満杯だったら?」と不安に思う気持ちもわかる。そして、予算はかけられないけれども待機児童問題を解消したい行政の思惑も、待機児童を抱えて仕事復帰できず苦しんでいる保護者の気持ちも、これから第一子を予定しているのに預け先がなく困っている人たちの気持ちも、わかるからこそ、八方塞がりに感じる。

 大きな議論を呼んだため、所沢市は7月2日に「育児休業終了後、安心して復園ができます」とあらためて発表。くわえて『第2子以降の出産に伴う育児休業中における在園児の保育利用(継続)について【Q&A】』も公開している。保護者からの「復園させてもらえるか不安だ」という声に対して、「育児休業から復帰する際の入園申請に際しては、優先利用の考え方に基づき、利用調整指数の中で 100 点の加算をつけて利用調整を行います」と明確にアンサーしている。100点って、相当大きい点数だ。しかしたとえば30名の受け入れ枠に対して、育休明けの受け入れ希望児童が60名いたら……その全員が「100点加算済」の状況だったら、この加点は意味がなくなってしまうのでは? また、復園でない子を預けたい保護者がまったく入る隙がなくなってしまうことも考えられ、これでも反発は消えない。

 それにしても。これだけ出生率の低下、少子高齢化が危機的状況だと叫ばれている日本で、どうして待機児童が発生するのだろうか? まず、この素朴な疑問に正面から切り込んだジャーナリスト・猪熊弘子さんの新書『「子育て」という政治 少子化なのになぜ待機児童が生まれるのか?』(角川SSC新書/2014年)をひもといてみたい。猪熊さんは4人のお子さんを通算15年間にわたって保育所に預けながらフリージャーナリストとして保育現場を取材してきた女性だ。

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