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死にたくないから切る 自傷女子高生の憂鬱

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傷の数だけ理由(ワケ)がある

傷の数だけ理由(ワケ)がある

最近暑いですね、と言いたいところですが、私が今住んでいる部屋は四月半ばまで極寒で、五月に入った瞬間亜熱帯になったので私的にはずっと暑いです。何が痛いってエアコン代であります。ある程度は我慢しているのですが、熱中症が恐いですからね。とか言ってると恐らく残暑の次の瞬間に極寒になりそうです。嗚呼。

さて、今回は山あり谷あり谷底ありな高校時代について書かせていただきます。前回煽った「親の予定をぶっ壊す」過程をお楽しみください。

完璧な「灰」スクールライフ!?

学校は中高一貫でしたので、私は形だけの入試を受けて高校に上がりました。高校から入ってくる生徒さんも結構いらして、でも見慣れた顔もいて、新しい教室には何だか不思議な緊張感が漂っておりました。

前回、中学時代は部活ばかりでクラスに友人がいなかったと書きましたが、まあ高校に上がってもそれはあまり変わりませんでした。例の厳しい部活もなく、高校では帰宅部だったのに何故かというと、ひょんなことから加入した学校行事の実行委員会の活動に燃えることになるからです。

きっかけは、仲の良い男子を通じて見知っていたクラスメイトがその実行委員会に入るらしいという噂でした。ちょっと彼のことが気になっていた私は、軽い気持ちで実行委員会に参加したのです。

結局きっかけとなった男子は不参加だったのですが、委員会の先輩方には大変良くしていただきました。第二回に書いた通り、私は洋楽のロックを好んで聞いていたので、その話題から洋楽リスナーの先輩達(やはり主に男子)と盛り上がるようになったのです。

なので、クラスでは少し、いや、かなり浮いておりました。中学で同じ部活だった面々とは徐々に離れつつあり、中学の頃からつるんでいた男子達も別のクラスでした。それでもクラス内で一応、五人組の女子グループに属していたんですね、私。今でも覚えているんですが、移動教室とかで廊下を歩く時、二人ずつ二列で歩くんで一人あぶれるんですよ。その役を自ら買って出ておりました。

クラスに友達はいなくても、授業はそこそこに受けていて、放課後は実行委員会のみんなで活動し、三年の先輩に恋心を抱いたりして、なんとまあ、青春ではありませんか。アオハルではありませんか。完膚無きまでに完璧なハイスクール・ライフ!

……に、ぱっと見は思える日々でした。でも実際は、「灰」スクール・ライフだったのです。

食べられない!

実行委員に入り学校行事の準備に燃えていた頃、ある問題が発生いたします。食べられなくなってしまったのです。

食欲がない、食べたくない、食べても吐いてしまう、空腹がなんか楽。そんな状態に陥り、自分で意図的に嘔吐してしまう癖がつきました。これは今でも治っていません。摂食障害というほど重篤なものではありませんでしたが、体調は悪くなります。それでも吐いてしまう。

親に言い出せなかった私は、体育の授業を見学する際、担当教師にこのことを相談してみました。返ってきたのは単純なひとことでした。

「無理にでも食べればいいだろ」

この頃から私は徐々に情緒不安定になって参ります。

当時の日記や友人との交換ノート(甘酸っぱい!)を見ますと、我ながら「こいつテンションのアップダウンヤバくね?」と思ってしまいます。

「仲の良い男子と話せて超楽しかった~!」とひとしきりノリノリで書いた次の段落で「生きてる意味が分からない……」と突如ダウナーになったり、「もう誰も信じられない」と嘆いた直後に「今日は先輩達とご飯食べた☆」とウキウキになったり。

まあ年頃の女子にはありがちなことかもしれませんが、段々とそのアップダウンが、ダウン多め、ナイン・インチ・ネイルズ的に言うと「ダウンワード・スパイラル」に陥ってしまうのです。

例えばこんな具合に。

「鬱的な危機に陥った。自分がいくらでも嘘をつけるから、人も自分に嘘をつくはずだと思いこみ、何奴もこいつも内心何企んでやがんのかよく解らない状況。『俺だけは信じろよ』そんな先輩の言葉すら、少なくとも言語能力と口の筋肉が尋常なら誰でも言えることだと思ってしまう」

思えば、この頃から既に私のメンタル、心だか頭だかの奥底では悲鳴が上がっていたのかもしれません。それが爆発するのが八月ですから、予兆とでも言うのでしょうか。

原因は分からないんです。メンタルが厄介なことになってから、色んな人が色んな理由を考えていました。親が厳しかったせいではないか、学校が辛かったのではないか、いやいや生まれ持ってのものだったのではないか等々。

どれも妥当なようにも思えましたし、どれも的外れな気もいたしました。病気になっちゃったのは事実です。受け入れて、引き受けて、然るべきケアを受けながら、それでも進んでいくしかありません。でも、理由を決めつけられるのはとても嫌でした。これは自傷も同じです。

だって、何事も人それぞれじゃないですか。精神的な病を抱える人は全員もれなく生まれつきの問題がありますか? リスカする人は全員もれなく死にたがっていますか? 絶対に違うはずです。傷の数だけ理由(ワケ)がある。その人のパーソナリティやバックグラウンドを吟味せず、表層的なことだけでその人自身を理解した気になるのはいかがなものかと私は思います。

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戸村サキ

昭和生まれ、哀愁のチバラキ出身。十五歳で精神疾患を発症、それでもNYの大学に進学、帰国後入院。その後はアルバイトをしたりしなかったり、再び入院したりしつつ、現在は東京在住。

twitter:@sakitrack

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